かわいそうなおまえがいとしい

脅されたからしょうがなく。それがこっち側についた最初の理由だった。
今じゃこんなくそみたいな世界をぐちゃぐちゃにできるならと、喜んで任務に取り組んでいた。つい最近までは。

「サヤ、お前ヘビとセックスはしたのかよ」

耳を疑う言葉に固まる私を無視して、沢渡は平然と口を開く。

「まだなのか」
「な、なんで」
「誰のヘビだと思ってる、お前がヘビに狙われてることくらい最初から知ってるよ」

沢渡の言葉に愕然とした。最初から知っていたのなら、どうして助けてくれなかったのか。
あまりの衝撃に言葉がでず顔をひきつらせるだけの私に、沢渡は冷めた視線を向けるだけ。

「かわいそうに」
「え、」
「ヘビなんかに好かれて」

知っているならどうにかしろよ、お前のヘビだろうが。
他人事のように言う沢渡に怒りを覚え、腹の底で毒を吐く。面と向かって言えない小心者の自分が大嫌いだ。

「セックスしたら教えろよ、祝ってやるから」

沢渡は爪をいじりながら至極どうでもよさそうにそんなことを言う。もはや乾いた笑いしかでてこなかった。くっだらねえ。結局ここもくそみたいな世界と一緒。脅しに負けず公安に行ってデビルハンターなんてやってれば、もう少しまともな人間に出会えたのだろうか。そこで考えるのをやめた。どう転んでも、私がくそなことには変わりなかっただろう。

爪をいじる沢渡の背からねっとりとした視線を感じる。
ヘビとセックスするのだけはごめんだと、祈るように天を仰いだ。

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