つよがり泣き虫ちゃん

「円くん辞めちゃうんだって?マキマさんから聞いたよ」
「そうですか」
「さびしいなあ、どうして辞めちゃうの?」
「特異課がきな臭くなってきたからです」
「そっか、たくさん死んじゃったもんね」
「……サヤさんは辞めないんですか?」
「辞めないよ」
「辞めるか殺されるかの二択しかないと思いますが」
「ふうん、じゃあ私は殺されるんだ」
「真面目に答えてください」
「大真面目だよ、というか円くんが勝手に考えた二択じゃん」
「今辞めないと後悔しますよ」
「なに?もしかして心配してくれてるの?」
「……僕は事実を言っているだけです」
「円くんのそういうところすきだよ」
「……」
「あと、強がりなところもね」

円くんの背中が壁にふれた。じりじりと迫る私から逃げるように後退し続けていた円くんは、これ以上逃げられないことに気づきひどく困惑している。間近に迫る私を見ないように顔を伏せる円くんの頬にそっと手をそえると、大げさなほどびくりと肩が跳ね上がった。
互いの温度が感じられるほどの距離に円くんの体は面白いほどにこわばっていく。伏せた顔を包むように両手で頬にふれると、円くんはぎゅうっと両目を閉じてしまった。上昇する体温がすさまじく円くんの体はどこもかしこも熱くてたまらない。ぎゅうぎゅうに閉じた瞼と、唇を強く噛みしめているその姿がなんともいじらしい。いつものクールな円くんはどこにいってしまったのか。

円くんの顔の傷を親指の腹でゆっくりとなぞりあげ、その傷に唇を寄せてぺろりと舐め上げた。体を震わせ目を見開いた円くんが再び瞼を下ろす前に、眼鏡を押し上げ傷に優しく口づける。

「……本当は怖かったんでしょ?慰めてあげるから隠さないで」

円くんのきれいな暗闇から、ぽろりと小さな涙がこぼれ落ちた。

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