好きだよ、星が生まれた日からだよ

きっと、この瞬間の私は世界で一番の大馬鹿野郎に違いない。

「離れなよ」
「いやだ」
「僕は構わないけど、いいの?キミの寿命どんどん短くなってるけど」

そう言って、天使の悪魔はどうでもよさそうに冷めた視線を向けてくる。
私の想いが少しでも伝わればいいと、繋いだ手をぎゅうっと握りしめたら、いたたとなんの感情もない言葉だけで終わってしまった。

私の最大の汚点は公安のデビルハンターになってしまったことじゃない。デビルハンターのくせに、悪魔なんかに恋してしまったことこそが汚点だ。
何度も勘違いだと思った。何度もこの気持ちをなかったことにしようとした。そのすべてが無駄だった。
天使の悪魔、こんなやつのなにがそんなにいいのか。いくら考えても答えのでない疑問に押しつぶされる苦痛の毎日だった。

そんな日々の積み重ねでわかったのはこの無様な気持ちだけ。
ただ、そこに立っているだけで私の視線を夢中にさせる。天使の悪魔のすべてが私の心を魅了していた。

「はやく離しなよ、ほんとに死んじゃうよ」
「……やっと、」
「なに?」
「やっと、さわれた」

こぼれでた本音と一緒に熱い涙が頬をつたう。ぽろぽろと流れでる涙に少し驚いたのか、目の前の悪魔は観察するようにじっと私の顔を見つめてきた。
初めての近さに胸がたしかにときめいて、絶望とともに諦めにも似た感情が私を支配する。
やっぱりすきだ。どうしようもなく。

「ずっとさわりたかったの」
「僕に?」
「うん」
「どうして?僕にさわれば寿命が吸い取られるって知ってるよね?」
「知ってる、でもさわりたかった」
「なんで?」
「……それでもさわりたかった、誰でもいいわけじゃないよ、君じゃなきゃいや」

きれいな言葉は心の奥底にしまいこみ、開いた口から吐きだされたのは子供のような言葉だった。
まばたきをするたびにぽろぽろと落ちる涙を、悪魔は死んだような目で見つめている。ふらつく体をなんとか留めて一層強く悪魔の手を握りしめた。

天使の悪魔は繋がれた自分の手と私の手に目を向けると、深いため息をつく。
そして私の手を振り払った。

「バカだなあ」
「バカだよね」
「うん、ここまでのバカは見たことないよ」
「そうだよね」
「でも、」


「かわいいよ」

最高の殺し文句をささやいた唇が、ちょんっと私の唇をつついてくる。そんな子供のようなかわいらしいキスにさえ、私の心臓は撃ち抜かれ悲鳴をあげた。
ぼやけた視界の中で至近距離にある悪魔の両目がゆっくりと細められる。喉にはりついた愛の言葉を飲みこむように、悪魔はじっくりと唇を重ねてきた。

寿命が尽きるまで、私たちはふれあっていた。

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