シャボン玉、割れた


初めて会ったときから、大好きでした。

「シャニ!何聴いてんのー?」
「……」

今日も私の大好きな人は、音楽を聴いている。

「ねー、シャニってば!無視しないでよ!」

私が少し怒ってヘッドホンをシャニから取り上げると、シャニはアイマスクを外して私を睨み上げる。

「…それ返して」
「私の事無視しない?」
「……たぶん…」
「その間はなに!?ていうかたぶんじゃだめ!」
「わかった。絶対無視しないから」
「ほんと!?」
「うん。だからそれ返して」

私はにこにこしながらシャニにヘッドホンを返す。
シャニはすぐにヘッドホンをつけ、目にアイマスクを装着して横になった。

「…ねー、シャニー」
「……」
「シャニの嘘つきー!思いっきり無視してんじゃん!」
「少し黙って」

シャニの面倒くさそうな反応に軽くショックを受けていると、シャニはさっさと部屋から出て行ってしまった。

「シャニー、行っちゃった…」
「おい、あんまりシャニにかまうなよ」

さっきまでのやりとりを見ていたオルガが、小説から視線を外して私に言う。

「え?なんで?」
「シャニがキレたら手がつけられねえの、お前も知ってんだろ?」
「シャニは私に怒んないもん!」
「…だといいけどな」

小さくため息をつくオルガに私は大丈夫だよ!と大声で言った。

「へっへーん!撃滅!」
「クロトうっせーよ!少しは静かにできねえのか!!」
「抹殺!撃滅!瞬殺!触覚!」
「クロトてめえ!!」

キレたオルガが勢いよくクロトに飛びかかって行く。私は自分に被害がこないうちにさっさと部屋から退散した。
シャニはどこかなあと、きょろきょろしながら廊下を歩いていると、ソファに座るシャニを見つけた。

「シャニ!」

急いでシャニの隣に腰掛ける。

「……」
「シャニあのね、私今クッキー作る練習してるんだよ!みんなが寝たあとにこっそり食堂行ってさ!」

私の話を聞いているのかいないのか、よくわからないけど。
シャニが私に反応を示してくれるまで、ひたすら話続けた。

「それでね!もし上手にできたら、シャニに食べて欲しいんだ!」
「……」
「あっ、もしかしてクッキー嫌い?シャニあんまり甘いもの食べないもんね、クッキーがいやならほかの何か作るよ!」
「……」
「えーと、甘くないお菓子ってなんかないかなあ、シャニはどんなお菓子が食べたいの?」
「……」
「シャニ?」

じっとシャニを見つめると、シャニは私と目を合わせてゆっくりと口を開いた。

「……あのさ…」
「なあに?」
「…うざいよ」

一瞬、目の前が真っ暗になった。

「……え…?」
「そういう行動、まぎらわしいから」

ああ、言われちゃったな。

「……うん、わかった。今までごめんね」

私は頭を下げてすぐにその場から走り去った。別れ際のシャニの表情は見ていない。
わかってた、ほんとは薄々感じてたよ。シャニが私の事、うざがってるって。でもシャニは優しいから、限界まで我慢してくれてたんだよね。
その限界を超えちゃった。私はほんとにバカだ。

廊下を歩いていると、背後から私を呼ぶシャニの声が聞こえてきた。振り返ると、シャニが走ってきているのがわかる。
無意識に走りだそうとすると、すでに追いついていたシャニが私の腕を引っ張った。

「やだ、離してよ!」
「待てよ、オレは…」
「もういいってば!!」

シャニの手を振り払おうとした瞬間、シャニは強引に私にキスをしてきた。
ゆっくりと唇を離すと、シャニはじっと私を見つめてくる。

「シャニ…」
「…お前はオレの事、本当に好き…?」

シャニの声は今にも消え入りそうだった。
毎日あんなに伝えていたのに。私があなたのことを嫌いだったときがありましたか?

「大好きだよ、シャニ…」
「……それが聞きたかった…」

大きな不安も、小さな不安も。
全部取り除けるほどの最上級の愛をあなたに捧げます。

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