真っ白な敗北感


もう限界かもしれない。そろそろ危ないかも。

「あ、みっけ」

びくっ。
私自身、かなり警戒してたはずなのに。

「今からオレの部屋来ない?」

こんなにもすんなり見つかってしまった。
顔を引きつらせる私をよそに話を進めるシャニは、ぐいぐいと私を自室へと引っ張って行く。

「まっ、まってシャニ!用があるならここで済ませてよ!」
「オレの部屋じゃなきゃ意味ない用事だから」
「(やっぱりかー!!)」

思っていた通りの事だと確信したときには、時すでに遅し。
気がつくと目の前にはシャニの自室があり、必死の抵抗も虚しく、私は無理矢理シャニの自室へと入る事になった。自室に入るなりシャニは私をベッドに寝かせる。

「シャ、シャニ?一応聞くけど、今から何するの…?」
「お前が期待してること」
「はっ!?ちょっ、まってシャニ…っ」

私の言葉なんかお構いなしで、シャニはすぐに深いキスを落としてきた。
このままじゃ絶対やばいよ、どうにかして逃げださないと。
必死に試行錯誤していると、シャニは器用に私の服の中へと手を進めて行く。

「ま、まってって、言ってるでしょー!?」
「ぶっ!」

私は勢い良くシャニを投げ飛ばした。
すぐに服を整え、ベッドに座り直る。

「…痛い…」
「シャ、シャニが、いきなりあんな事するからでしょ!?」
「いきなりじゃないよ。毎日やってるじゃん」
「毎日逃げ回る私の身にもなってよ!」

私がそう言うと、少しふてくされた顔をするシャニ。
私は思い切って疑問を投げかけてみた。

「なんでシャニは、その、毎日こういう事してくるの…?」
「したいから」
「(即答!?)」

焦る私をよそにどこかきょとんとした表情をするシャニ。
私は深いため息をついた。

「したいなら私以外の人とやってよ」
「無理」
「えっ、なんで?」
「お前としたいから」
「……!」

一気に真っ赤になった顔を隠すために、私はすぐさま下を向いた。
なんで普通に、そういう事言うかなあ。

「お前は毎日逃げてるけど、オレの事嫌いなの?」

少しだけ真剣な目をしてくるシャニに、ぶんぶんと私は首を横に振った。

「じゃあ、なんで逃げるの」
「だ、だって、シャニは、したいだけ…なんでしょ?」
「うん」
「えー…」

シャニのあっさりとした回答に、私はまた大きくため息を吐いた。

「……じゃあ、シャニはさ」
「うん」
「私の事、好き…?」

この質問に、シャニは一時停止した。
うわー!言っちゃったー!
私はシャニの回答に耳を傾けながらも必死に顔の熱を冷ましていた。

何分か経ち、シャニの声が聞こえてこないことを疑問に思い私がシャニのほうに顔を向けると、シャニは少し考える素振りをしている。
私の視線に気づいたシャニは、ゆっくりと口を開いた。

「……わかんない」

えー!
わかんないって、え?嘘でしょ?

「わ、わかんないって、なに!?」
「考えたけどわかんなかった」

淡々と答えるシャニに、私はありえないくらいショックを受けていた。
シャニは、ほんとうに私とやりたいだけなんだ。

「好きじゃないとやれないの?」

シャニの問いかけに、私は答えることが出来なかった。
シャニは少し間を置いて、言葉を口にする。

「オレ、お前と一緒にいると楽しいよ」
「……」
「でも最近は、お前が近くにいるとさわりたくなる」
「……」
「お前にさわると離れたくなくなって、もっとお前といたいって思うようになった」

言葉を淡々と発するシャニ。
そんなシャニの言葉に、私は愛しさを感じた。

「シャニ、それほんと…?」
「うん、ほんと」

にこっと優しく笑うシャニにつられて、私も少しだけ微笑んだ。

「あ、やっと笑った」

シャニは嬉しそうに私の目の前に来て、私をぎゅっと抱きしめてくる。

「やっぱり、お前と離れたくない…」
「シャニ…」
「ずっと一緒にいようよ」

そう言って、私に軽いキスをするシャニに、私の心臓はありえないくらい反応してて。
もう、シャニには敵わないな。

「うん、ずっと一緒にいようね」

私の目の前でまた嬉しそうに笑うその顔を、ずっと見ていたいなって思った。

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