ミッションコンプリート
ピコピコピコピコ。
毎日、毎日ゲームばっかりやって、ちっともこっちを見てくれない。
そんなとき、私の頭にひとつの提案が浮かんだ。
私はゲームに集中しているクロトの背後へと、ゆっくり近づいた。
そして、一気に。
「わっ!!」
「うおっ!?」
クロトは思った通り、すんごく驚いているみたいだった。
やった!もう成功しちゃった?
「なんだよ!いきなり脅かすんじゃねーよ!ブワァーカ!」
クロトは私に舌をべーっとだして、すぐにまたゲームへと視線を落とした。失敗にがっかりしながらも、私はクロトの目の前のソファに座り、次の作戦を考えていた。
どうやったらゲームをやめてくれるのかな。
じっとクロトを必要以上に見ていたが、クロトはそれにまったく気づかず楽しそうにゲームに熱中している。
私はおもむろに口を開いた。
「クロトー」
「なに」
「今日の晩ご飯何だと思う?」
「知らね」
「知りたくない?」
「別に」
くっそー、全然食いついてこないし。
私はまた少し考えたあと、クロトに向かって言葉を発した。
「クロトー」
「なに」
「アズラエルの秘密しりたくなーい?」
「別に」
「アズラエルの秘密だよ!?知りたくないの!?」
「つーかさぁ…」
クロトはゲーム画面から顔を上げ、少し機嫌悪そうに私を睨んできた。
「さっきからなに?うるさいんだけど、ゲームやってんだから遊ぶならシャニかオルガに頼めよ」
そう言ってすぐにゲームに視線を落とすクロト。
私はソファから立ち上がりクロトに向かって叫んだ。
「なによ!ゲームばっかやってさ!つまんないクロトじゃなく優しいシャニのとこに行っていい事たくさんしてきてやる!」
私がべーっとクロトに舌をだし部屋から出て行こうとすると、背後からクロトの声が聞こえてきた。
「いっ、いい事って、シャニとなにする気だよ!」
私が振り返ると、ゲーム画面じゃなく私を見ているクロトと視線が合う。
私は少しだけ口角を上げた。
「クロトには関係ないでしょ?大好きなゲームでもやってたら?」
「いいから言えよっ!ブワァーカ!」
「絶対いや」
私の言葉に眉間のシワを一層多くするクロト。
クロトはゲームの電源を切り、ずんずんと私に近づいてきた。
「てめえなぁ!」
何かを言おうとしたクロトは私が笑い出したため、喋るのをやめた。
「あっはは!やったー!私の勝ち!」
「はっ!?なにがだよ!?」
「あははっ!クロトの負けー!」
「なっ!意味わかんねえし!なんの事か薄情しやがれー!」
クロトがゲームをソファに投げだし、私に掴みかかってくる。
私はそれでも嬉しくて、ただただ笑っていた。