俺は食べることが大好き。飯だって菓子だって食えるんならなんでも好き。ちょー好き。
だから俺から食いもん盗ろうとしやがる奴はすっげー嫌い。大っっっ嫌い!

「いーなーいーなー、お菓子いいなー食べたいなー」
「……」
「ブン太くんひとつちょーだいよ」
「やんねーよ」
「いいじゃんひとつくらい!ちょーだいよー」
「うっぜ」

昼休み。中庭でひとりゆっくりしながら菓子食ってたらまたこいつが現れやがった。こいつは一週間くらい前からずっと俺にくっついて離れない。言わば幽霊。なんで俺の前にいきなり現れたのかもわかんねーし、俺に付きまとう意味もわかんねえ。わかるのはこいつが俺と同い年くらいの女で、無駄に食欲があって、無駄に菓子が好きで、無駄に俺から菓子を奪おうとすることくらい。あ、ちなみにこいつのこと見えるのは俺だけっぽい。半透明だけど菓子もちゃんと食える。幽霊なのに変な奴。

「ブン太くん、私この世に未練があるみたいなの…だからいつまで経っても成仏できなくてさー」
「へー、じゃあ俺が成仏させてやるよ」
「え、ほんと!?」
「さっさと消えてほしいし」
「…ブン太くんそれ本心?」
「はあ?本心に決まってんだろぃ、で?なにすりゃお前成仏すんの」
「そのお菓子ちょーだい!」
「はああ?」
「その新商品のお菓子食べたら私、成仏できる気がする!」

ありえねー。今こいつなんて言った?俺が今食おうとしてる今日一番食うの楽しみにしてたこの新商品の菓子をよこせって?ふざけんじゃねえよ誰がやるかバカヤロー。いや、でもこれやんねえとこいつ消えねえし。ずっとこのまま俺の周りうろうろされんのもなー。結果、俺は仕方なく手にしていた菓子を幽霊のあいつに差し伸べた。ほんっっとーに仕方なく。ちっくしょ、さっさと消えやがれ!
菓子をこれ見よがしにうまそうに食う女の姿に、俺の苛立ちは最高潮にのぼりつめていた。イライライライラ。寂しい口元を補うように急いで風船ガムを口の中に放り込む。ふと女のほうに目をやると、女の体は光に包まれだんだん薄くなっていっていた。

「お、おい」
「あ、やった!私成仏できるみたい、ブン太くんちょっとの期間だったけど一緒にいれて楽しかったよ、お菓子何回ももらっちゃってごめんね、お世話になりました、ありが、」

パンッと小さな音をたて光と共に女の姿が一瞬にして消えた。どこを見渡してもあいつの姿はない。なにあいつ。ありがとうくらい最後までちゃんと言ってから消えろよな、だっせー。
くちゃくちゃ。口の中に大好きなグリーンアップル味が広がる。ぷうっと小さく膨らませてまたすぐに口の中に戻した。なぜか胸の辺りはもやもやして気持ち悪い。昼休み終了のベルが鳴ったけど無視して俺は仰向けに寝転んだ。くちゃくちゃ。グリーンアップル味が少しずつ薄れていく。俺は無意識に眉間にシワを寄せ、ガムを大きく大きく膨らませた。

「ブーン太くんっ」
「!」

ひょっこりと俺の目の前にあいつの顔が現れ、驚く間もなくあいつは俺が大きく膨らませてるガムにチュッとキスを落とした。パンッ!とでかい音が響いて俺の口元にベタベタするガムの感触が。目を見開く俺を目の前のあいつは楽しそうに笑いながら見つめてる。え、なんでこいついんの。

「やっぱり新商品のお菓子食べただけじゃ成仏できなかったみたい、ブン太くんが食べるの我慢してまで私にくれたお菓子だったのにごめんね、そういうことだからこれからもよろしく!」

誰がよろしくなんかするかよ、つーか菓子返せバカ女。

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