!最後までただただ暗いです

今日は一通も、あいつからメールが返ってこない。まさか、まさかまさかまさかまさか!
バン!と思いっきりあいつの部屋のドアを開けると、以前来たときよりも格段に汚くなった部屋の隅に小さくうずくまるあいつの姿が。俺は急いであいつのそばに駆け寄った。

「おい、おいっ、おい!」
「…んー……凛…?」
「やー、わんが前来たときやか痩せてんじゃねえか!ちゃんと飯はかむんって約束したやっし!!」
「…んー…でもめんどくさくて…」
「やー…っ!」

まさかと思いこいつの細っこい腕を掴んでみると、腕全体が痛々しい赤に染まっていた。それは腕どころか足も首も腹も、全部全部赤い。俺が前にここに来たのはいつだったか。その日からろくに飯を食べていないらしいこいつの体は骨と皮だけだった。俺を見上げるその顔は、頬は痩せこけ唇はかさかさ、両目にはまったく生気が無く虚ろに俺の髪を見つめている。なんで、なんでなんでなんで!

「やーっ、死なねえって、もう一回ちばてぃみるって、わんと約束しちゃんあらに!なのにぬーがこんなくとぅすんだよ!!」
「…やっぱり無理だよ…私なんか…」
「なんかなんてあびるなつったやー!!」
「…だって…ほんとだし……もういいじゃん…死にたい…」

なんでなんでなんでなんで!どうしてこうなった、一体いつから?突然、そうだ。こいつがこうなったのは本当に突然だった。いつも通り学校に行って明るく過ごしてたこいつが次の日にはもうこうなってた。何度理由を聞いてもこいつは一向に口を開こうとしない。なんで言わねえんだよ、なんで言えねえの。わんにも、わんにも言えねえことなのか?
こいつは小学校のとき本土から沖縄に転校してきて、なぜかわんの家の近くに住み始めて、なぜか仲良くなって、なぜか中学も一緒のとこになって。たぶん、わんとこいつはすげー気が合ってたんだ。本土とはまた違う雰囲気に戸惑ってよくおどおどしてたけど友達もゆっくりできてったし。元気だけが取り柄みたいな明るくていい奴だった。本当に、いい奴だった。

でも、精神的に弱いとこもあった。普通の人より何倍も打たれ弱かった。友達と喧嘩したときは一週間泣き明かして部屋から一歩も出てこなかった。わんと些細な喧嘩をしたときはその何倍もこいつは傷ついて部屋から出てこなかった。だからわんはもうこいつを傷つけないように泣かせないように笑顔でいてもらうように、喧嘩はおろか些細な口喧嘩さえしないように心掛けた。それなのになんで。

「…凛…もう、いいよ…」
「…は?」
「もう…私なんか…構わなくていいよ……ごめんね…こんなんが近くに…引っ越してきちゃったから…いろいろ気にしてくれてるん、だよね……面倒くさいのに…ごめんね、凛…優しい…から…」

ごめんね、今までありがとう。

ふざけんな、ふざけんなよてめえ。わんが優しい?なに勝手なことぬかしてんだこいつ。わんがどうでもいい奴にここまでするかよ。毎日毎日ちゃんと生きてるか不安で不安でメールして電話して。もうどうすることもできなくて泣くしかしないバカなお前の両親に代わって飯だって無理矢理食わせてやって。これを全部わんが優しいからやってることだと思ってたのかお前は。ふざけんなふざけんな!わんの気も知らないで、自分のことばっか考えやがって。わんは、ずっと、お前のこと。

「…しちゅん」
「…死に、たい…」
「でーじかなさん」

だからそんなこと言わないで。

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