クレイジー・ダンス


「くたばれ世界の汚物!!」
「ぐお!」

どかんと物凄い衝撃を背中に受け俺はさっきまで見ていたテレビ画面に思いっきり突っ込んだ。痛い、痛すぎる。ぷすぷすと頭から煙を出す俺の後ろから、銀ちゃんてめ、今ピン子が重大なこと言おうとしてたじゃねーか!せっかくの名シーン見れなくなったネ!ふざけんじゃねーヨ!!神楽ちゃん落ち着いて、とりあえずテレビ直すために銀さんのへそくり頂きますか。そうだね、壊したのはクソ天パだもんね。って、ちょっと待て!お前がいきなり蹴り入れたから銀さんテレビに突っ込んだんだろーが!俺のせいじゃなくね?明らかこいつのせいじゃね?つかメガネ!てめーはなんで俺のへそくり知ってんだ!!

「ちょっと待て!さっきから聞いてりゃ俺がわりーみたいなこと言いやがってさあ!大体てめーなに背後から飛び蹴り食らわしてんの?格闘家にでもなったつもりかコノヤロー、銀さんマジギレしちゃったからね」
「うるせえんだよくそ天パの分際で口答えしてんじゃねえ殺すぞ」
「なにこの子!?俺の天パ並に性格歪んじゃってるんだけど!どうしちゃったの!?」
「銀さんまた怒らせるようなことしたんじゃないですか?前だってこんなことあったし、そのときも銀さんが原因だったし」
「いや、でもそんときは普通に怒ってただけだよね、こんな人格豹変するほど怒ってはなかったよね」
「あーなんかいらいらするなー、私の目の前にいるくるっくるでふわっふわな白髪の腐りきって濁りまくりの目のやつ死んでくんねーかな、頼むからそこの窓から落ちてくんねーかな」
「おい!どんだけ殺意剥き出し!?お前ほんとどうしちゃったの!?俺?俺がなんかした!?」
「あーはいはい、そうやってなんでもしらばっくれる気ですか」

そっちがその気ならもういいですよと悪態をついて万事屋から出て行くあいつ。突然のあいつの変わりようにまったく理解できず俺はただただ首を傾げる。なんで?なんであいつはあんなに不機嫌なんだ。いや、不機嫌というよりもむしろ俺を殺します的な?ていうか殺すぞ的なこと言ってたよね、思いっきり殺意出しまくりだったよね。え、いや、ほんとに意味わかんないんですけど。銀さんまったく身に覚えがないんですけど。なに?え、どういうこと?

「銀さん追いかけなくていいんですか?」
「いや、追いかけるも何も、なんであいつがあんな怒ってんのかわかんねーし」
「浮気ネ」
「は?」
「女があそこまでキレると言ったら浮気しかないヨ、銀ちゃん頭空っぽだからそんなこともわかんないネ、そんなんだから足の裏すっぺーんだヨくせーんだヨ寄るなヨくせーから」
「おい!!最後のほうてめーの文句ばっかじゃねえか!足の裏くせえとか関係なくね?俺の足がどれだけすっぺかろーとてめえらには関係ねえだろーが!」
「いや関係あるから!迷惑だから!」
「いいから早く追いかけてこいヨ」

鼻くそを俺のほうに飛ばしながら言う神楽を軽くしばき重い腰をあげ仕方なく外へ出た。あいつは何かあればすぐ公園に行く。たぶん今も公園にいんだろーな。あー面倒くせえ。まったく面倒くせえ女だ。
公園に向かう途中、なんであいつがあそこまでぶち切れてるのか考えながらそこら辺に咲いてる花をむしり取り歩いた。公園内には何人かの子供と交じってベンチに座るあいつの姿が。あいつはひどく落ち込んでいるのか顔を俯けなんとも重苦しい雰囲気を背負っている。キレたと思ったら今度は落ち込んでんのか。本当に面倒くせえ女。

「お嬢さん、こんなところでなにしてんの」
「お嬢さんじゃない、子供じゃない」
「じゃあおねーさん、こんなところでなにしてんの」
「おねーさんじゃない、大人じゃない」
「だああ!ほんと面倒くせーなお前!それじゃあなに?婆さんか、お前はよぼよぼに砂漠化した婆さんか?」
「婆さんじゃない、老けてない」
「もうほんとになんなのこいつ!」

まったく最近の女はとぐちぐち文句を言いつつ俯いたままのこいつの隣に腰掛ける。そのまま数分間沈黙。こいつはぴくりとも動かず一向に俺のほうを見ようとしない。なんなんだよちくしょー。ぼりぼりと頭を掻いて仕方なく懐から少ししおれてしまった乱雑な花を取り出し隣の女へ差し出した。

「お嬢さんだかおねーさんだか婆さんだか知らねえが、そんな俯いてたらいい女が台無しだぜ」
「…銀ちゃん」

やっとでいつもの声色に戻ったこいつは俺の名を呼び、泣き腫らした目で俺を見る。こりゃ案外神楽の言う通りかもしれねえな。浮気だとかそんなこと。気にしてないようで気にしてるこいつは本当に面倒くせー女だ。
差し出した花を見つめ受け取ったこいつは綺麗だなんて言っていつものように優しく笑う。なにが綺麗だ、そんなどこにでも咲いてる花なんてどこも綺麗じゃねえよ。泥もついてるししおれてるし。それでも綺麗だと言って花を眺めるこいつから俺は目が離せなかった。

「おい、今からどっか行かねーか」
「え、いいの?」
「バッカおめー、銀さんがいいって言ってんだからいいんだよ」
「やった、あのね、私」

突然ぴたりと止まったこいつは俺のほうを見て固まっている。なんだ、一体どうしたんだ。そういえば腕に何か違和感が。そっとこいつとは反対側の腕を見てみるとそこにはいつからいたのか、納豆メガネ女の姿が。なぜか俺の片腕を納豆だらけのねばねばの手で抱き締めている。ちょ、なんかくせーと思ったらこいつ!?つかなんでいんの?てか離れろ!せっかく今いいとこだっつーのに!
ねばねば女に集中していたら反対側からどす黒いオーラがどんどん押し寄せてきて俺は冷や汗を滲ませる。いやいやいや、まてまて。ちょ、違う。これは浮気じゃない、断じて浮気なんかじゃ、

「やっぱりその人と浮気してたんじゃねえか!このくそ天パ抹殺すんぞコラ!!」
「ちょ、まてまて!落ち着け!」
「銀さん!その人は誰!?私というものがありながらそんな女と二股かけてたのね!」
「お前も余計なこと言ってんじゃねえ!うわ、ちょ、ぎゃああああ!!」

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