「蚊に刺されたみたい」
「どこを?」
「ここ、かゆい」
「僕に見せてみろ」

蚊に刺された手の甲をがりがりかきまくってたら、かきすぎだってひょいっと取り上げられた。だってかゆいって言う私を無視してじいっと私の手の甲を見つめていた伊東は、何を思ったのか突然舌を出し蚊に刺された箇所をねっとり舐め上げる。え、なんだいきなり。びっくりしてる私なんかお構いなしにべろべろと虫刺されを舐める伊東。うわあ、くすぐったいむずがゆい。私が少し身じろぐと舌を尖らせ虫刺されを舌先でつんつん。同時に伊東の大きな指が私の指に絡んできて、はあはあ。あれ、こいつ興奮してないか?ちゅうっと虫刺されを吸われたまらず伊東に声をかけた。

「伊東、なにしてんの」
「っ、すまない」
「…なんで息荒いの」
「ちが、」
「興奮したの?」
「いや、その」
「なに?」
「こ、こうふん、した」
「なんで虫刺されに興奮してんのよあんた」
「そ、れは、もう一ヶ月も君に、触れてないから、キスだって全然、」
「あんたねえ、それは最初に言ったじゃん、次のテストで頑張んないと私留年するかもしんないって担任に言われたから今回のテストは死ぬ気で頑張るって、だからテスト終わるまであんたとは会わないって、私言ったよね?」
「い、言った…」
「なのになんで今日私の家きたの?やらしいことするため?」
「ち、ちがう!ただ君に、会いにきたんだ、一ヶ月も避けられて我慢、できなくて」
「学校で会ってるじゃん、まあ話してないけど。私ほんとにバカだからさ、このくらい徹底してやらないと勉強できないんだよ、あんたのことを少しでも考えるともう全然集中できないの、学年トップの伊東にはわかんないと思うけど」
「す、すまない」
「私が留年してもいいの?」
「いやだ!だめだ絶対!」
「じゃあ今日私の家きたのは本当に勉強教えてくれるためなんだね?」
「あ、ああ」
「それならよかった、手はなして」
「う、でも、でも」
「伊東」
「すまない、君が、本当に本気で頑張ってることは理解してるんだ、けど、一ヶ月も君と話せなくて毎日毎日頭の中は君のことばかりで触りたくて触りたくてキスしたくて僕のほうがどうにかなりそうなんだ」

言いながら今度は私の指を舐めてくる伊東に私はため息をこぼす。顔を真っ赤にさせて夢中で私の指を舐めたり吸ったり噛んだりする伊東がどうしようもなくかわいい。はあはあ。伊東の荒い息に触発されそうになるのをなんとかこらえて、下唇をかみ締める。私だって私だって私だって。本当はこの一ヶ月すごく苦しかった。伊東と話したいけど話せなくて触りたいけど触れなくてキスしたいけどキスできなくて、私のほうがどうにかなりそう。私がこんな致命的なバカじゃなかったらテスト勉強しながらも伊東と一緒にいられたのに。バカすぎてごめん。でも来年も伊東と一緒の学年にいたいから頑張るよ。

いつの間にか私の指と指の間に舌を差し入れ卑猥な行動をしている伊東をじっと見つめると、私の視線に気づいた伊東がうっとりと熱い視線を私に向ける。どうか私の思ってることが伝わりますようにと見つめ続ける私になにを思ったのか、真っ赤な伊東の顔がだんだんと近づいてきて。あ、こいつキスしようとしてる。遠慮なしに近づく伊東の顔を手で止めれば、いつもは人を見下す冷たい両目が切なそうに細められうるうると涙がにじむ。ああかわいいかわいい。伊東かわいいよ大好きよ。

「キス、したい」
「伊東…」
「っ、ごめん、嫌いに、僕のこと嫌いにならないで、頼むから」
「嫌いになんてなるわけないじゃん、伊東だけだよ、こんなバカな私を好きでいてくれるの」
「君はバカなんかじゃないっ、かわいい、すごくかわいい」
「ふふ、ありがとね」
「好きだ、好きなんだ」
「私も、ねえ伊東、私が留年免れたらさ、ご褒美にたくさん伊東にキスさせて」
「え!キ、キス?」
「うん、伊東もたくさん私にキスして」
「キスも、だけど、たくさんたくさん、君にさわりたい」
「いいよ、たくさんさわってね」
「うん、うん!」
「でも、私が留年しちゃったら無しだけど」
「なっ、」
「だから応援してね」

私がにっこり微笑むと、伊東はぐっとなんとかこらえてやっとの思いで私の手を離した。真っ赤な顔してとろけるような優しい瞳でそれじゃあ勉強しようかと微笑む伊東。どうしよう私のほうが我慢できなくなりそうだ。かわいいかわいい私だけのかわいい伊東。ずっとずっと大好きだよ。

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