「伊東くん、このお菓子を食べてみたまえ!」
「…なんだその言い方は」
「伊東さんのまねですよ!」
「まったく似てないな」
「マジかよ、昨日寝ないで練習したのに」
「バカか?それより仕事はどうした」
「大丈夫です、絶賛サボり中なんで」
「さぼってる分際でなぜそんなに偉そうなんだ?そのどや顔やめろ、壮大に苛立つマジで斬るぞくそ女」
「こえーよ伊東さん!どうどう、落ち着いて、このお菓子伊東さんに渡したらすぐ仕事戻りますんで」
「はあ?」
「落ち着いて落ち着いて!さあさあどうぞ!新作の抹茶ポテチですよ!」
「くそまずそうだな遠慮する」
「即答!?」

いやいやそう言わずに!せっかく伊東さんのために買ってきたんですから、仕事の合間に!とか言いながら必死に新作の菓子をすすめてくるのは、下っ端隊士でサボり常習犯のくそ女。おい、今仕事の合間に買ってきたとか言わなかったか?こいつは真面目に仕事をする気があるのか腹立つ。本当なら今すぐにでも真選組をクビにしてやりたいが僕の独断だけではそれはかなわない。こいつは僕の部下ではなく一番隊、沖田くんの部下だ。こいつをどうにかするのは沖田くん次第。だが自由奔放な彼はこいつを大層気に入っていて、よく一緒に仕事をサボっては土方くんに追い掛け回されている。沖田くんとは良いサボり仲間らしい、前にこいつが聞いてもないのにへらへらしながら言ってきた。バカである。よってこいつが真選組をクビになることは絶対にありえない。最悪だ。

「マジやばいうまくないっすかこれ!想像を絶するうまさだわー、うまうま」
「おい、なんで君が食べてるんだ、僕に買ってきたんじゃないのか」
「あれ、おねだりですか?」
「こっちにこい今すぐその空っぽな頭かち割ってやる」
「ひえーこえー」

口ではそう言いつつ、こいつはにこにこしながら言われた通りに僕の目の前にきた。まるでお遊びのように抹茶ポテチを口にくわえながら僕にどうぞ!と顔を近づけて。なんだ、ポッキーゲームのようなことを僕にやれと言っているのかこの女は。ふざけるななぜ僕がお前なんかと。
以前、一番隊のくせに沖田くんの部下のくせに、関係ない僕のところによく顔を出すのはなぜなのか聞いてみたことがあった。こいつはいつもと変わらずあほっぽく笑いながら、あなたといると楽しくてたまらないからですよーって言っていた。それは本当か?って聞いたら本当に本当ですよ、最低一日一回はあなたに会いたいですって。
無言の沈黙の後、目の前の女がくわえているポテチをバリバリ食べて、そのまま僕の口を女の口に押し付けてやった。

「っ!え、ええ?」
「だめだ」
「え、ま、まって、どういう」
「もう一回」
「ちょ、んっ!」

顔を真っ赤にしてあたふたする女を無視して再度口を押し付けた。乱暴に押し付けたからか、女の口からくぐもった声が漏れて耳が敏感になる。顔がありえないくらい熱い、心臓が、心臓が痛い。でもお互い口の中は抹茶ポテチだ。せっかくの甘ったるい雰囲気なのに、それだけが残念だ。

「い、いとう、さん!」
「は、やっぱりくそまずいじゃないか」
「そ、んなことより」
「仕事をサボった罰だ、黙って受け入れろ」
「ばば、罰じゃないですよ」
「は?」
「こんなの、ご、ご褒美です、ははっ」
「…本当か?」
「本当に本当ですよ、うわあ恥ずかしいっすね」

爆発するんじゃないかってくらい真っ赤な顔で、本当に嬉しそうに笑うから、気が緩んでしまって一瞬、視界が揺れた。ささくれだった心をまるごと包み込んでくれた君に、嬉しさがこぼれる。

「…君が、僕の部下だったらよかったのに」
「あはは!それは私もよく思います、そしたら毎日いつでも会えましたね」

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