神様気取り


うちの団長はただのちゃらんぽらん。私達部下のことなんて何にも考えてなくて自分がしたいようにする。何とも自由で自分勝手な人。そのせいで何度団長に殺されかけたか。部下なのに上司に殺されかけるなんて。ある意味今生きてるのが奇跡とさえ感じる。なんて上司だ。どうやら私は何かいろいろと間違えてしまったらしい、仕事場とか仕事場とか。それにいつもわざとらしく薄ら笑みを浮かべているのも気にくわない。なに笑ってんだコノヤロー、なんてあの人の前じゃ口が裂けても言えないけど。心の中では毎日かかさず念じている。もう呪いの領域。
そして毎日積み重なってきた団長に対する憎悪が今日、一気に爆発した。もういいや、どうなってもいい。殺ってしまおう。

「団長ー!お菓子作ってみたんで食べてみてくださーい!」
「へえ、なかなかうまそうだね」

ごとりと重量感溢れる音をたて置かれたそれはもはやお菓子というレベルではなく、作った張本人の私でさえただの石像に見えた。明らかに毒々しいオーラを出しているその大きな黒いかたまりをはたして団長は食べてくれるだろうか。というか見た目でバレそう。もう少し見た目にも凝ればよかった。
自分の詰めの甘さに落胆しているともぐもぐと何かを食べる音が聞こえ私はすかさず顔をあげる。目の前の団長はにこにこと笑顔を絶やさずおいしそうに私の作った黒いかたまりを次から次へと頬張っていた。た、食べてる。団長食べちゃってるよ、特製下剤入りお菓子。どんな胃袋の持ち主でも一週間は便器から離れられなくなるという世にも恐ろしい究極の下剤。入手は困難でかなり苦労したがそれも救われた。頑張って入手してよかったよほんと。これで団長は一週間ひどい腹痛に悩まされ便器から離れられない。その隙に私はここを辞めて晴れて自由の身だ!

わくわくと輝く未来を頭に思い描いているとごちそうさまという声が聞こえ団長の手元を見てみれば見事に空っぽ、さっきまであったはずのでかでかとした黒いかたまりはもうどこへやら。まさか全部食べてくれるなんて。これで下剤の効果はより確実なものとなった。団長に気付かれないよう小さくガッツポーズをし今か今かと団長を見つめる。団長はにこにこしていてその場から動く気配がない。あれ、おかしいな。確かあの下剤の効果は超強力で飲みこんだ瞬間からひどい便通に悩まされるはずなのに。

「団長、おいしかったですか?」
「全然、やっぱりあんたの作るもんはくそまずいね」
「そ、そうですか、あはは」

にこにこ。あれ、まだなのかな?もうそれなりに時間は経ったと思うんだけど。にこにこ。団長は相変わらず笑みを浮かべたまま。あれ、あれれ。だらだらと冷や汗が滲む。おかしい、なんで団長は普通に座ってられるんだ。予定では団長は今頃便器から離れられなくなってて、私はそんな無様な団長を指さしながら影で爆笑してるはずなのに。え、どういうこと?あ、もしかして団長トイレに行くのが恥ずかしくて座りながら漏らしてるとか?いやいやそれはない。臭いとかも全然しないしそれは確実にない。それじゃあなんで?

にこにこ笑顔を浮かべている団長に背を向けこそこそとポケットから例の下剤を取り出す。うん、間違いない。私はこの下剤を確かに投入したはずだ。ええ?じゃあなんで利かないの?もしかしてこれが偽物だったとか!いやいや、あんなに苦労して手に入れたんだからそんなはずない。ええ?だめだ。全然わかんなくなってきた。

「ふーん、これが超入手困難な特製の下剤か、よく手に入れたね」
「え、」
「言っとくけど俺には通用しないよ」
「ち、違うんです、これはその、あそこに落ちてて!さっき拾ったんです!だから私のじゃ、んんー!!」

がばっと勢いよく口に手を突っ込まれたかと思うと、次に口の中に流れ込んできたのはなんとあの下剤。どばどばと一気に流し込まれあまりの苦しさから逃れるためごくんと無意識の内に喉を鳴らしていた。あれ、今飲んだ?私あの下剤飲んだよね?
カランと床に投げられたのは空っぽになってしまった下剤のビン。ま、まさかあれを全部!?恐る恐る団長に目を向けると同時に、ギュオオオオとお腹に激痛が走った。

「俺をおちょくるなんていい度胸だね」

ちくしょう、覚えてろよ!

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