雨音に滲む 3 | ナノ


雨音に滲む 3




「……おいおい」
 シャワーを浴び終えた銀八は、予想していなかった光景に思わず声を洩らした。ベッドを背もたれに、すやすやと規則的な寝息を立てる女。それが自分のクラスの生徒だなんて、実はとんでもないことをしてしまったのではないかと今更のように頭を掻いた。
 駅前で偶然会ったとき、すごく疲れた顔をしているのが気になった。そういうのを表に出すやつじゃないから、おそらく本人は無自覚だろうということも。だから少しだけ休ませてやろうと、そう考えていたのに。
(とんでもないこと口にしてくれちゃって……)
 別の言葉を重ねてきたことからも、雨音にかき消されて聞こえていないと踏んだのだろう。いやいや聞こえたからね、これでも国語教師だから意味も知ってるしね。動揺を悟られないようにするのがどれだけ大変だったか、きっとこいつは知らない。見えないはずの月に想いを乗せる横顔が、焼き付いてしまった。
 すっかり眠ってしまった彼女の身体を抱き上げ、きちんとベッドに寝かせれば、ますます複雑な心境になる。これは、まるで、本当に悪いことをしている気分だ。幸いまだ夕方と呼べる時間。最悪、夜になる前に起こせば大丈夫だろう。
 ベッドに染み付いた心地よい男の人の匂いと甘い匂いに安堵しながら寝た妙は、結局彼に起こされるまでずっと眠り続けていた。目覚めた彼女によっぽど同じ言葉をかけてやろうかと思ったが、その悪戯めいた楽しみは、もう少し先にとっておくことにした。




11.07.07.(七夕)
最後の1ページは書くか迷っていたのですが、続きは想像にお任せしますと言うにはもったいないくらい妄想が弾んでしまいまして
なんだかんだで、3Z銀妙は初めてみたいです




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