華芝香奈が華芝香奈である由縁
黒軍禊神社文官専用本部提出記録フォルダ
・白軍ヒト強化実験(仮)について
以下の音声記録は■■■/■■/■■/■■:■■に記録されました。
杉原隆善文頭:■■■/■■/■■/■■:■■黒軍禊神社文官頭、杉原隆善ならびに、
杉原宗介助手:息子、杉原宗介が助手として聴取に当たります。調書、読み上げます。……猿田道明一等学徒兵、以下猿田道明は■■■/■■/■■/■■:■■、西区一〇八九の調査を行っていたところ、不審な子供を発見した。猿田道明、発見時の詳細をお願いします。
猿田道明一等学徒兵:ふむ、儂も改まってしゃべった方がよいのか?
杉原隆善文頭:いや、いつのも調子でかまわない
猿田道明一等学徒兵:ではお言葉に甘えるとしよう。西区一〇八九での調査をしていたときに奇妙な子供にあってな。発見したとき服はボロボロなのに傷ひとつなくてな。おかしいと思って様子を見ていたら、野犬に襲われそうになっていた。あわてて助けようと飛び出したら、野犬がぺしゃんこになっておったのよ。
杉原宗介助手:ぺしゃんことは。具体的に述べてください。
猿田道明一等学徒兵:おぬし、普段と態度が違いすぎてきもちわる……ふん、具体的に言えばよいのじゃろう?そうさな……ふむ、内側から爆発したような肉隗があったといえばよいかの。子供の手も血だらけになっておってな。よくわからんが、とにかく子供が野犬をつぶしたことだけはわかったのだ。その瞬間は早すぎてわからなかったが。
杉原宗介助手:続けてください。
猿田道明一等学徒兵:うむ。それで儂は子供にゆっくり近づいて声をかけたのじゃ。「お嬢さん、どうかしたのかえ」とな。そしたらそいつは「西区■■■■…」といったのじゃよ。でもたしかその地域は十何年か前に住人全員が神隠しにあったところじゃろ?まあそのとき居た場所から近かったのでな。本部に連絡をして、連れて行ったのじゃ。
杉原宗介助手:本部に連絡の記録が残っています。連絡したのは■■■年■■月■■日■■時■■分でよろしいですね。
猿田道明一等学徒兵:よろしいよろしい。それで行ったらな、子供は泣き崩れてしまってな。手で地面を殴るからとめようとしたんじゃが、地面が派手にえぐれててな。怪我したらいやだったからとめないでほおっておいたのじゃ。そうしたらな、子供の手はぜんぜん傷つかんのだ。それで、落ち着いたところを保護してきたというところじゃな。
杉原宗介助手:ありがとうございました。質問対象を変えます。お名前を教えてください。……お名前、お兄ちゃんに教えてくれるか。
白軍ヒト強化実験被験者(以下被験者と記す):かな。華芝香奈。
杉原宗介助手:ありがとう。香奈って呼んでもいいか?
被験者:うん。
杉原宗介助手:じゃあ香奈。お誕生日はいつなんだ?いつうまれたかわかるか?
被験者:わかんない……。でも、香奈このまえ15さいのたんじょうびおめでとうっておかあさんにいわれたよ
杉原宗介助手:……そうか。おかあさんはどうしたんだ?
被験者:おかあさん……香奈がにげられるようにって、かべをみんなでこわしてくれたの。そのときにうごけなくなってて
杉原宗介助手:悲しかったら言わなくてもいいんだぞ。
被験者:だいじょうぶだよ。香奈、しつもんこたえるのとくいだよ
杉原宗介助手:わかった。じゃあ香奈は今までどこにいたんだ?
被験者:わかんない……むらのみんなといっしょにしろいへやでねかされてたの。いっつもうでにおみずがはいってくるながいくだみたいなのをつけられてたよ。それでときどきひとりでおへやにいれられて、あのひとをころしなさいっていわれて、ころしたの
杉原宗介助手:そうか。怪我しなかったか?
被験者:いたかったけどすぐになおるんだって。おくすりのおかげっておいしゃさんがいってたよ。でもねすごくいたいからおくすりもころすのもいやなの。
杉原宗介助手:そうだったんだな。香奈は白い部屋からどうやって出てきたんだ?おかあさんたちが壁を壊してくれたんだっけか。
被験者:そうだよ。香奈は逃げなさいって。西区の■■■■ってところにつれていってもらいなさいって。そこにおうちがあるよって。
杉原宗介助手:そうだったんだな。最後に聞きたいんだが、質問されるのはなれっこなんだな?
被験者:うん。いつもおいしゃさんにきかれてたよ。ちゃんとこたえないとぱんってされるからがんばったよ。じょうず?
杉原宗介助手:ああ。すごく上手だ。えらいな。…香奈はこれからおにいちゃんとこのおじちゃんと一緒に過ごすことになるけどいいか?
被験者:うん。
杉原宗介助手:じゃあ後で迎えに行くから、あのおにいちゃんについていって待っててほしい。
猿田道明一等学徒兵:さあお嬢ちゃん、おにいちゃんとまってようかの
被験者:わかった。
杉原宗介助手:以上、記録を終わります。
作成者:杉原宗介助手(第三歩兵小隊隊長・学徒兵長)
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