▼白軍1 本部付近特殊作戦テントより

「α2破壊されました」
「α1無傷。バイタル問題ありません」
「γ4心拍上がって居ます。180.190.195.200突破しました」

大隊本部の片隅のテントに、12台のモニターとGPSをにやにやと見つめる雨宮康太は居た。 γ4と書かれたモニターに目を向けると心電図の波がぐらぐらと不安定に振れている。

「γ4の機能を停止してください」
「了解。γ4の機能を停止します」

淡白に交わされる会話。一番大きく波打って居た線がぱたりと動きを止め、棒一線を描く。
何も成果を残して居ないのに消えて言った命に康太は一つ息をついた。

「γ3にγ4の処分を通達してください」
「了解。γ3に通達します」

その言葉が告げられて数十秒もせず、とあるモニターから衝突音と小さな悲鳴が聞こえる。それを見て康太はわざとらしくため息をついた。

「なんていうか、堪え性がありませんねぇ」
「無理言わないでちょうだい。あなたほど肝の座った生徒は稀なのです」

モニターの前に座っている少女、北川律子がそう言った。その視線はモニターから外さない。

「それは、褒め言葉として受け取っても?」
「ご自由にどうぞ。・・・悠生ちゃんに関してもそのくらい肝が座ってればいいのに」
「はぁんっ!!悠生悠生かわいいよぉ」

律子の口から悠生、という言葉が出た瞬間に康太はその身をきゅっと小さくして呻く。

「きしょくわる」
「何か?」
「いえ別に。…あっ」
「どうかしましたか?」

突如声をあげた律子はモニターを指差す。

「β2のモニター。映像の方です。建物の向こう側に何かが」
「管轄外ですね。本部にでも情報を送ってやりなさい。βは壊れても構いません。記録は続けてください」
「…了解」

律子がカタカタとキーボードを叩く側、康太は手で顎を軽く触りながらニヤニヤと笑う。

「何者なんですかねぇ」

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「子守とは、なんというか退屈な任務だねぇ」

白軍の集団を横目に、ベルトを目元に巻いた奇抜な格好をした男が呟く。その声にはなんとなく士気がなく、真っ白なバイクに頬杖をついている。
その後ろでアンティークな単眼鏡を覗く、男がクスクスと笑いながらいう。こちらは小さな白いシルクハットをかぶり、顔面の片側をピエロを模した仮面で隠している。

「ギーウェット!暗殺じゃなくとも大切な任務さ!ただ、君の笛の出番はなさそうだねぇ」
「どうやら、可哀想な子供はいなそうだ。僥倖、とでもいうべきかな?」
「ま、今回は従順な御者にでもなってくれたまえ!さあ行こう行こう」
「珍しくウキウキしてるじゃないか。バイクは気に入ったかい?」


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