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「いっけぇマーニー!!」


ビテュニアの掛け声でマーニーは馬車でデュラハン型ミレンに突撃する。
もろに正面衝突を喰らったデュラハン型は板が軋むような断末魔をあげて霧散した。

この瞬間をもって襲い掛かってきたミレン8体は全滅した。

一同は息を吐いたり大きく伸びをしたりと身体の緊張を解く。が、それは、けたたましい通信機からの音楽で遮られた。

悪趣味なロック調で主張し続ける音に何人かは派手にビクつき何人か、特に雄一はげっそりとする。


「…あの人いつの間にこんなの…」


呆れたような、疲れたような顔をして呟いた深雪をはじめとしてため息が幾度も重なった。あまりの音量に通信機を耳から一旦外す。

騒がしいギターの不協和音がフェードアウトするとやけにこの場とは真逆にやけに明るい声音が響いた。


『やぁっほー!!聞こえてますかー?』

「…じゃろうゆぅて思うたんじゃ」


呆れた様子で顔を顰め通信機を付け直しながら案山子が言った。
夕輝は苦笑しつつ通信機の向こうに呼びかける。


「自重しろっていつも言ってるじゃないか、朔斗?」


それに通信機の向こうの声、朔斗が鼻歌交じりに答える。


『じちょーなんて言葉、俺っちの辞書にはあーりますぇーん』

「逆にあったらびっくりー」

『Si!わかってるじゃなぁい尋ちゃん!』

「…ほめてないんだけどー」

『…火箸、朔斗先輩ですか?』


続いて聞こえてきた声に首を傾げる。今の声は朔斗のものでも、この場にいない夏羽や和彦のものでもなかった。が、朔斗は何も疑問に思ってないように笑い飛ばした。


『真くんでしょ?白軍の艶野真くん!』

「……何故白軍がこの通信機を?」

『な、なっ夏羽先輩から頼まれたんです!』


大袈裟なほどにどもる真の声にビテュニアが首を傾げる。


「夏ちゃん?夏ちゃんがどぉかしたの?」

『あ…弾?が無いから補充してくる、と。その間に状況説明を頼まれました』

「夏羽あいつ…!」


小さく拳を握って唸る祐一を尻目に深雪がまた尋ねる。

「和彦先輩は?」

『あー!うん!ごめんごめん!』


次に通信機から聞こえてきた声は和彦のものだ。ただ、その声にはノイズが掛かっていて少し聞き取りにくい。


「和彦か?何か問題でも起こったんか?」


案山子の問いかけにすぐに対応できる状況ではないのか、ノイズと喧騒が暫く響いた後に和彦の慌て気味の声が応えた。


『ごめん!アナライズ忙しくってそっちに気が、小春くん上だ!炎を撃ってくる!本当に、ちょっと手が離せ、志信ちゃん撃っちゃって!』

「…わかりました。報告なさい」

『は、はい!』


呆れ気味の一の声にまたどもって真は話し始めた。


『報告します。町の中心部にあるビルの屋上で戦闘しています。白軍2人、黒軍4人、赤軍2人、離脱者1人の計7人です。ミレンが大量発生していています。倒しても新たなミレンが発生し、キリがありません。アナライズに和彦先輩、救護に白の織川さんがいます。夏羽先輩は弾薬の装填のためこの場を離れています。以上です』

「わかりました。このまま通信は切らないでください。其方へ援護に行きます」

『はい、わかりました。…あ、ちょっと待ってください!』


真の言葉に朔斗を追求しようとしていた夕輝は閉口した。なんだ?と問いかけると真は話し始める。


『僕たちがここに来る前に何かおかしな気配に遭遇してるんです』

「おかしな気配ー?なぁに、それ?」


ビテュニアは首を傾げながら聞くが真は残念そうに答える。


『わからないんです…。ただ、黒軍の東雲秋人先輩がその影響で戦闘不能状態まで追い込まれてしまっていました。皆さんも注意してください』

「ええ、わかりました。把握しておきましょう」

「で…あんたは何の用だよ朔斗。Kから特別任務受けてたんじゃねぇの?」


報告を聞いてすぐに雄一が顔をしかめながら聞く。するときゃらきゃらと笑い声が帰ってくる。


『アハハッ!ゆうちゃんったら釣れないんだからぁ〜!仏頂面が目に浮かぶよ!』

「んなことはどうでもいいんだよ。何の用だ」


ほんっとにつれないなーと言う声の後に少し静かな声で朔斗は言った。


『Kからの伝言。あ、真くんも聞いててね?嫌な予感しかしねぇ。精々気をつけておけ。以上』

『へ?』

「それだけなの?」

『おう、それだけ』


尋の言葉に返ってきた声は明らかに得意げだったが、いかんせん内容が内容なので、空回りしているようにしか聞こえない。


『ってぇ、あのさ?あのKが危ないって言ってるんだよ?灰色も慌てて増員させようとしてるところなんだからマジだってぇ!』

「…わかりました。町の中心部へ向かえば良いのですよね?」

『Si!俺っちも向かうから待っててねぇん!』


朔斗のその言葉を最後にブチッと通信が切れる。
少しの沈黙が辺りを占める。夕輝の「…いくか」と言う鶴の一声でやっと一同は町の中心部へ向かった。





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