逢魔時0:05 《灰の境界》


赤軍が公園で交戦している頃、市街地。
秋人を先頭に黒と白の集団がいた。 どこに行くわけでもなく佇んでいる集団の端で秋人は集中するように目を閉じていた。その後ろにはあゆみが居て心配そうに見ている。


「…秋人先輩?どうですか?」

「…いや、向こうの方にいるっていうのはわかるんだけど、それ以上は…」

「うっわぁ、お兄様つかえなーい」

「…もういっぺん行ってみろや小春」

「…っ!!」


喧嘩腰になった兄弟の間に志信とヒュプノスが入る。必死で手を振り何かを伝えようとしている2人を見て兄弟はひとまず口論をやめた。


「秋人先輩!彼方から煙が…!」


キョロキョロと辺りを見渡していた真が一方に向けて指を差す。
その先には黒い煙が立っていて、なにやら爆発音が聞こえてくる。

真の差した方向に目を向けると秋人は苦々しい顔になる。


「あー…あっちは良いんだよ、赤が居るから。あっちじゃなくて、向こう側から何か反応が…」


そこまで言うとパキン、と言う何かが割れる音と同時に秋人を中心として金色の光が飛び散った。
光はやがて秋人の後ろに集まり着物を着た青年が現れる。
青年、スガワラノミチザネの突然の登場に秋人は目を丸くした。


「みっちー?どうした?」


ミチザネは思いっきり顔をしかめると視線を街の中心部へと向けた。
市街地を横切る広い道路の先にある中心部にはビルが立ち並んでいる。


「みっちー言うな。向こうからミレンの反応がする」

「そんなの知ってるよみっちー」

「みっちー言うな弟。数がやけに多いんだよ…7…いや、9だな」


ミチザネはそこまで言うとあ、と声を上げる。


「みっちー?どうかしたんスか?」

「みっちー言うなと言っているだろう青髪。ミレンが1体倒された。誰が襲われてるんじゃないか?」


その声に一同はミチザネを見た。ミチザネは視線を落とすことなく一方を見つめる。


「守護霊が2体。が、多勢に無勢だな。早く行かないと死ぬぞ、あいつら」

「…ッ?!それを先に言えって!オッサン!」


その言葉に弾き飛ばされたように朱美が言うと、朱美の斜め前に甲冑を着た3メートル程の厳つい男が現れる。巨大な男、シグムンドはニッと笑った。


「オッサンあっちだ!」

「ま、待ってくださいっ」


今にも走り出しそうな朱美をあゆみが止める。首を傾げるシグムンドをきゅっと見上げる。


「私も…私も連れて行ってください!エラトーならある程度近づけば細かい場所がわかるし、怪我人がいるかもしれないし、それに…わっ!」


必死に言い募るあゆみを見下ろしてシグムンドは手を差し伸べ抱き上げた。


「怖かったら言えよ嬢ちゃん!」

「っ!はい!エラトー!」


あゆみが声をかけるとシグムンドの隣に華奢な女性、エラトーが現れる。エラトーはにこりと微笑みかけた。


「よしっ!行くぞ!」
「おうってうわっ!!」


シグムンドは空いている手で朱美を捕まえると脇に挟まれる。


「おおお落とすなよオッサン!」

「ガッハッハ!!落ちるなよ小僧!」



豪快に笑ったシグムンドはエラトーを伴って大量のミレンの反応がある中心部へと走り去っていった。


「…いっちゃいましたね…」
「僕たち何も言われてないんだけど」
「……」
「…落ち込むなよ薬師さん。俺たちは俺たちで行こう。なぁみっちー」
「みっちー言うな」





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