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『…ヒメちゃん?ヒメちゃん!返事して!!』

「落ち着け案山子ちゃん!」


ガシャンとひどい音がしてから一からの通信はぷつりときれた。
そのせいでひどく慌てた案山子を夕輝が宥める。


その間に飛んでくる鎌鼬のような風の塊をフノスが抱きしめるように吸収する。
夕輝は後ろから襲おうと大口開けて突進してきたヘルハウンド型を撃ち殺して辺りを見渡した。

一帯のミレンを倒し続けているけれど、全然減らない。灰の境界が発足されてから大凡40年近くになるが、夕輝の知る限り、つまり書面に残っているものに限るがこんな異常事態は発足以来初だろう。

ミレンとは人の特に負の感情の残留思念の具現化と言われている。それ故か出現するのは戦場や事故現場が多い。今回の場合も例に漏れない。が、この場所はここまで【未練】が溜まるような場所だとは考えにくい。何故ならこの場所は嘗て赤軍の反乱により黒、白両軍に所属又は肩入れする者の粛清を行った場であるが見せしめという意味が強く、派手な殺害方法をとったが実際に殺した人数は少ないのである。関係のない民間人も何人か殺されたらしいがそれこそ両手の指の数に満たない。
それが、何故こんなに沢山のミレンをおびき寄せる?何か、何か考えられるとしたら。


「何か…おびき寄せている?機械か、人か、何かあるかもしれない!それを探すんだ!」

「にーちゃん、なんか、なんか来る…!」

「何、が…」


弟の指差す方向を見ると、そこにいたのは奇妙な生き物だった。いや、アレを生き物と認めて良いのであろうか。そんな事はしてはいけない。あいつらはうばってしまう。だいじな、みゆきを、うばって、うばって…


「う、あ、うわああああああああああああッ!!!」

「にーちゃん?!」








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テーマ「人外ファンタジー」
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