とある探偵の困惑
bookmark


新宿駅の南口に面したビル街。その中の一つにオフィスを構える羽星探偵事務所で本を読んでいた八代伊吹はふとその視線を扉に向ける。
間も無くして扉は開かれ、釈然としない表情の仇野真尋が入ってきた。荷物もおかずに給湯室に引っ込むとすぐに氷の入ったグラスと煙を吐くティーポッドを持ってソファーに座っている伊吹の隣座った。

「はぁ…。全く彼奴は何考えてるんだか」
「………」
「なんで傲慢!なんて自分勝手!しかも無差別ならまだしも人を選んでやがる…。俺の正義に反していないのがムカつく」

退屈そうに足をバタバタ動かす。ガタガタ揺れる手元に気にせず伊吹は活字を追う。

「神を名乗っているくらいだから相当なやつかと思って装備だって完璧したのに選りに選って小物だし。てか、神って言い出したのは本人じゃなくて自宅警備員とか終わってるだろ」
「………」
「っはぁーーー。ここでガチな神とかなら納得いったのになぁぁ。まぁ、やることチマチマしすぎてて違うかなとか思ってたけどさぁぁ」
「………」
「もういっそ偽造しちゃおうかな、遺体。DNAあるし」

そう言ってちらちらと髪の毛のサンプルをひらひらと振った。
伊吹はパタンと本を閉じるとグラスに暖かな紅茶を注ぐ。
真尋はそれを一瞥してから大きくため息をついた。

「それもそれで共犯っぽくてやだなぁ。…つか何読んでるのかと思ったら妖蛆の秘密かよ」
「…敵対するかと思ったから」
「お勉強してたのかよ」






prev|next

[戻る]
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -