強引な子供




「好き、なんだけど。」





彼はぼそりとそう言った。



一護がいつになく真剣に私を見つめてくる。その瞳からは逃げられないことを感じとる。


早く逃げなければいけないのに。







「す、好きってチョコのことか?相変わらず貴様は見かけに似合わず甘党だな!」

「ルキア...。」

「まぁ私も人の事を言えんがな。ああ!甘いモノの話をしたら白玉が食いたくなった!今から甘味処に...」

「ルキア!!」







人がせっかく空気を変えようとする努力も彼の怒鳴り声によって打ち消される。それによって私が必死に作った笑顔も壊された。






「お前....わかってんだろ?」






ああわかっているさ。一護が好きと言った対象なんてわかっている。
わかっているから否定するんだ。
気付いてたさ。お前が私を好いているくらい。だから気づかないふりをして仲間だとか言ってお前の視線を無視していたのに。




私はもう生を終えた者で彼は生はまだ続く者で交えるなんてあり得ないんだよ。交えばお前は私に縛り付けられ苦しむんだ。お前は優しい。だからずっと私の側にいる。自分の老いていく姿と私の変わらない姿に苦しむんだ。
貴様はそれが理解できていないだろう。たかが15年生きた餓鬼にわかるはずがない。


だから、お願いだからこの否定を受け入れろ。分かれ、お前のためなんだ。










「俺はお前のことが....」

「私はお前が嫌いだ。」





一気に彼の表情が凍りついたことに少し安心感を抱く。嫌な女だと自分でも思う。







「自惚れるなよ。お前は私に受け入れられると思って気持ちを伝えたんだろうが、私はお前が嫌いだ。だから受け入れない。簡単なことだろう?」







私は馬鹿にしたような笑みで彼を見つめる。それを見つめ返す彼。



頼むから見つめるな。
こっちは必死で隠しているんだ。お前の綺麗な瞳で壁を崩されそうで嫌なんだ。なのによりいっそう強く見つめてくる。




お前に恋をしている溺れた死神を見ようとするな。










「嫌いでも俺はお前が好き。てかお前も俺のこと好きだろ?」









さっきの凍りついた顔から一変して自信のある表情で彼は言った。










「自惚れるなと言っているだろう!いつ私がお前を好いていると言った?」

「自惚れてねーよ。確信だ。もう言い逃れんな。」








“答え、聞かせて?”




気付いたら抱きすくめられ、耳元でそうささやかれた。

私が必死に隠したモノがボロボロと剥がれていくのを感じた。
心を隠すのは得意だったはずなのに。いつから不得意になったんだろう。ああそうか、一護に出会ってからか。

本当どれだけ私を変えれば気が済むんだ?

どれだけ黒崎一護という存在が私に影響すれば気が済むんだ?











「私は死神だ。」

「うん。」

「お前は人間だ。」

「うん。」

「だが、貴様の言った通り私はお前が好きになってしまったんだ。そしてお前も私を好きだと言った。」

「....ハッピーエンドじゃん?」

「お前はわかっていない。私はもう死んでいて、お前は生きている。死んだ者と生きた者は相容れない。」

「相容れないなら何でこうやって触れんの?話せんの?矛盾してる。それに俺半分死神。俺って何なの?」

「そ、それは....」

「あーごちゃごちゃ考えんな。もう普通に両想いでいいじゃん。はい、カップル成立おめでとう。」

「勝手だぞ!」

「お前の意見は却下。あの時も言っただろ。もう反論すんな。」






さらに力を込めて抱きしめられた。




後は私が一護に腕を回せば彼が言うように“カップル成立”なのだろう。





朽木ルキアあろう者が餓鬼の思い通り。固めていた決意は彼の言葉によってとっくの昔に壊れていて、本当屈辱だ。



まぁそんなのも悪くないと思える自分もいて。

だけどやっぱり腹立たしくて。




だから腹いせに力いっぱい彼を抱きしめてやった。



苦しげなうめき声が聞こえた。台無しだよ糞餓鬼め。


END

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