女>男
「黒崎君って心が狭いと思うよ。」
たまには、ということでルキアと石田と井上とで昼飯を食べていた。
が、ルキアと石田が委員会で呼ばれて席を外した。ついでにルキアは美化委員、石田は学級委員。委員会に入るだなんて物好きだなと思う。
んで井上と二人になった瞬間、いきなりその一言。
わけわかんねーよと呟くと井上は箸をビシッと俺に向けてきた。
「あのね、私とたつきちゃんとで日曜日買い物に行くのですよ。」
「はあ・・・。」
それが俺の心の狭さに何が関係しているんだ。さらにわけわからない。いや、井上がわけわからないのは何時もだが。
「んで、もちろん朽木さんを誘ったわけですよ。」
「ちょ、何を勝手に!」
「そこー。なんで黒崎君の許可がいるの?朽木さんもね、“一護に聞いてからにする”って言うし。ということで私たちはフラれてしまったの。
結論!黒崎君は朽木さんを独り占めしすぎだよ。」
ああ、だから心が狭いというわけか。やっと納得する。不本意だが。
後、井上にとってはルキアに断られた事実も気にくわないんだろう。
しっかしルキアの奴、俺に聞いてからにする・・・か。うえへへ普段はあんなんだけど何だかんだで俺のこと好きじゃん。素直じゃねーよな本当。
「ああ、それと朽木さん“一護は餓鬼だからすぐに不機嫌になるからな”とも言ってたよ。」
・・・そうですよね。数秒前まで良かった機嫌が急降下だよ。あ、そこが餓鬼かよちくしょう。
「そんなに嫌?朽木さんが自分の側にいないと。」
井上がさっきとは表情を変え、真面目に問う。
ルキアが側にいなくなるということは一番俺が恐れていることだ。
いつ向こうから帰還命令があるかわからないし、もしその時代行証を取り上げられたら?もし霊力を奪われたら?そうなったら多分彼女は俺に人間として生きろと言って二度と姿を現さないだろう。
だからこそ常に側にいないと不安なのかもしれない。餓鬼でも何でも構わないから彼女を側に置いときたいんだ俺は。
井上の問いには“そんなことねーよ”という照れ隠しツンデレ言葉が浮かんだが、何だかそう言ったら井上のシナリオに沿うようで嫌だ。
「嫌ってものじゃねーよ。アイツがいなかったら生きていけないんだよ。」
井上は数回瞬きを繰り返し、きょとんとする。多分、想像の言葉と違うからだろう。俺が照れてあたふたする姿が見たかったんだろうが、へへんざまーみろ。
「録れた?たつきちゃん。」
「うん、バッチリ!」
「・・・・はい?」
いきなり背後からたつきがニヤニヤとしながら現れる。その手には携帯電話は握られていた。
・・・・さっきの井上が言ったことを思い出してみよう。
録 れ た ?
「お前らまさか・・・。」
「そのまさかだよ。」
たつきが携帯をボタンを押す。
“嫌ってものじゃねーよ。アイツがいなかったら生きていけないんだよ”
「うあああああ!!」
「連続で流してみる?」
“嫌ってものじゃねーよ。アイツがいなかったら生きていけないんだよ”
“嫌ってものじゃねーよ。アイツがいなかったら生きていけないんだよ”
“嫌ってものじゃねーよ。アイツがいなかったら生きていけないんだよ”
「ちょ、たつきマジでやめろ!」
「たつきちゃん、次は途中で切ってみようー。」
「はいよー。」
“嫌ってものじゃね”
“ーよ。アイツがいなかっ”
“たら生きていけない”
“んだよ”
「うわー噛み噛みで台無しだね黒崎君。」
「何これ?いじめ?」
「一護の嬉し恥ずかし青春台詞って小島喜ぶだろうなー。」
悪 魔 だ こ い つ ら !
「まぁ私らは優しいからそんなことしないけど。」
「だけどこれを消すには交換条件があります!」
井上がニコニコとそう言った後二人は声を揃えて
『日曜日は朽木さんを貸すこと!』
と言った。
あーあ、今回はお前らの作戦勝ちだよ。ちくしょうめ。
その後ルキアが帰ってきて、俺はため息をつきながら日曜日の計画を立てている三人をぼんやりとみるしかなかった。
石田が嫌みで“今週の日曜日の予定は?”と笑いながら聞かれたが、無視をした。
END