君と僕の関係



「カミナは“相棒”、ニアは“恋人”
なら私は何?シモン。」




テッペリン攻略からだいぶ経って
人間が街を作り始めて
俺の身長がヨーコと同じくらいになった時

彼女はその質問を投げかけた。
そしてその質問に俺は答えられなかった。



仲間であり、初恋であり、兄貴を巡るライバルでもあったのかもしれない。色々な想いがあるこそ俺らの関係を表す言葉がわからなかったのだ。
















“あっ”とお互い言ったのは同時だった。お互い手には花を持っていて、目的は同じだと気付いた瞬間吹き出した。








「シモンもみんなに会いにきたの?」

「ああ。ヨーコも?」

「うん、色々報告もしにね。」








彼女は変わっていなかった。最後に会ったニアと俺の結婚式の日から。赤い長い髪も、強い眼差しも。
変わってないねというと“女心わかるようになったじゃない”と笑った。この年になるとそう言われる方が嬉しいらしい。うんやっぱり俺には女心はわからないようだ。







大グレン団のみんなの墓に二人で花を置く。彼女がキタンの墓に花を置く時一瞬切なそうな顔をしたのは見なかったことにした。キタンには悪いが彼女には兄貴を想っていてほしいという我が儘。
その目線を外す為に俺は彼女に花を差し出す。






「ヨーコ、俺の分の花を兄貴の所に置いてきてくれないか?」

「・・・・気を使ってるわけ?シモンのくせに!」

「そんなつもりはないよ。ていうか俺のくせにって何だよ。」

「そのままの意味よ。ならこれ、私の花。ニアの所に置いてきて。二人きりにしてあげる。」

「お気遣いどうも。」






俺達は大切な人の花を相手に託しそれぞれの恋人の場所へ向かった。

そこの前に立つと何とも言えない気持ちが入り交じる。愛しさ、感謝、悲しみ、寂しさ・・・何とまぁ統一性のない感情。








「・・・・ニア。」



花を置き、彼女に話しかける。

その後の世界のこと
今、俺が何をしているか
ニアが居た頃の思い出
ロージェノムとの戦い
アンチスパイラルとの戦い



どんな話をしても当たり前だが、反応はない。でも俺は話し続ける。ニアがそこにいるように。



だんだん話題がなくなって少し沈黙する。







「ニア、また来るよ。」



愛してるだなんて声に出すと恥ずかしいから言えない。今度来る時までには言えるような人間になっているだろうか。













兄貴の墓を見ると彼女ももう話は終わったみたいだ。



「兄貴と何話したの?」

「内緒よ。あんたこそニアに愛の言葉一つくらいは言ったんでしょうね?」

「よ、ヨーコ!」

「赤くなる所がまだまだガキねー。」





彼女はクスクスと笑う。


やはり俺をからかう辺り変わっていない。同い年だけど何処と無く彼女は大人だ。

強がってるだけよとロンは言っていたけど俺にとっては大人だった。


だから、14才の時彼女に想いを寄せたのかもしれない。相手を頼りにするという男としては情けなかったけど。

彼女に恋をしていた時の情けない俺。兄貴に依存して付いて回って。その想いすらたぶん彼女に伝わっていなかっただろう。
だけどその俺がいるから今があるんだよな。








「カミナは“相棒”、ニアは“恋人”
なら私は何?シモン。」

「え。」

「覚えてる?私が昔あんたに質問したこと。で、あんたは答えられなかった。」

「ああ覚えているよ。」

「私もね、わからなかったんだ。私達の関係が。だからあんたに答えを求めた。結局お互い様だったけど。
だけどね、今二人になったらわかる。似た者同士なのよ、私達。」







最初俺達は憧れを追い求めて戦った。
そして同時に憧れを失った。

仲間が居なくなった時も、必ず彼女は一緒だった。

大切な人達を失って、その失った世界を生きていかなければいけない俺達。



そうだ似ているんだ俺達は。


似た者同士と言ったヨーコも、それに同意した俺も同じ傷を持ち、それの癒し方を知らないんだ。




俺は彼女の手をとった。
暖かくて生きているんだと感じとると泣きそうになる。








「ヨーコ。」

「流されちゃだめよ。私達は傷を舐め合いたいたいんじゃない。」








彼女は苦笑いをし、俺の手を握り返す。



彼女の言う通りだ。
俺達はこんな同情し合う関係になってはいけない。お互いの暖かさに甘えてはいけない。別の道へ精一杯歩き出さなければならないんだ。












名残惜しく手を離して皆の墓に別れを告げ、俺達はそれぞれの場所に通じる道に立つ。









「ヨーコ、元気で。」

「うん、シモンもね。」









たぶんお互い二度と会わないということがわかっているから“またね”とは言わない。


俺達は一緒にいたらたぶん甘えてしまって、思い出に縛られて前に進めない。
似た者同士だから。










最後に見た彼女の姿は相変わらず綺麗で、俺の中では大人だった。


そして最初で最後に握った彼女の手を暖かった。


END

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