余裕をもてない子供(沖田と神楽)




好きな人が自分のためだけの人形だったらいい。たまにだけど狂った考えを俺は持つ。

だけどやっぱり現実は人形ではなく人であって、俺のために存在するだなんてあり得ない。特に俺の想い人は人類みんな友達だっていうタイプのお人好し。他の人に笑いかけ、みんなに平等だ。真選組の中で一番だなんて作らない。
せめて隣の位置副長のポジションにいたいと思うがなかなか奴は死んでくれない。俺の思い通りだなんていきはしない。


ああ本当に人形であればいいのに。
















「税金泥棒アル。」

「休憩中でさァ。言いがかりはよせィ。」

「さっきから何時間休憩してるアルか。」









日陰になっている公園のベンチは昼寝場所に最適だ。しかし今日はチャイナ娘に妨害された。うん最悪。
最初はコイツも俺のことを無視して他の友達と遊んでいた。が、夕方になっても俺がまだいることに鬱陶しさを感じたのが、ただ単に友達が帰った寂しさか俺に話しかけてきた。









「もう夕方ですぜ。餓鬼はもう帰る時間でさァ。」

「そこらへんの餓鬼と一緒にすんなヨ。それに今帰っても銀ちゃんがいないアル。だからつまんないネ。」

「珍しいな。いつも3人一緒だろィ。」

「今日の仕事は“お前には早い”って言われたアル。」







ああ色恋関係の仕事か。そこらへん旦那は思春期の娘を持つ父親っていうか何というか。
とにかくあの眼鏡だけ連れていってコイツは留守番ってわけか。

・・・何となく近藤さんが土方さんだけを連れて行った時を思い出した。











「悔しくねーのか?」

「何がアル?」

「仲・間・外・れ。」








嫌味ったらしく呟いた。少し八つ当たりなのかもしれない。あの敗北感を誰かに押し付けてスッキリさせたかったのだ。近藤さんは女の子には優しくしないとモテないぞと笑顔で言ってたけど、それはあの人が言うと信憑性がないので実行しない。まぁモテたらモテたで嫌だけど。



すぐに怒ってくるだろうなと思ったら呆気にとられた顔をしてコイツ何言ってんの的な感じで見つめてくる。









「私にはお前が何を言っているかわかんないヨ。」

「あーあこれだから餓鬼は・・・・。お前旦那のことが好きなんだろィ。今回旦那は眼鏡を選んだってこと。」

「・・・・で、私が悔しがる姿を見てお前は楽しむアルか?どうしようもないドSネ。」

「おーご名答。」

「本当に性格悪いアル。でも私はお前の思い通りにはならないヨ。
私は万事屋が好き。銀ちゃんも新八もどっちも好き。だから今回は悔しいんじゃなくて寂しいだけアル。」







今度は俺が呆気にとられた。俺の当初の予定ではコイツが傷ついて悔しがる顔を見て、自分のモヤモヤを押し付ける予定だった。
ああ何か?俺がやろうとしてたことは失恋した奴らがお互い慰め合おうっていうやつか? コイツと?冗談じゃない!

というかむしろモヤモヤを増幅させるような結果になっている。気分が悪い。





うん、やはり精神苛めより物理的な力で解消しよう。コイツは俺と戦り合っても死なない。好都合だ。そう思って刀を抜こうとした瞬間、彼女を相変わらずの気の抜けた声で呼ぶ声がした。









「銀ちゃん!新八!」

「何?この組み合わせ。神楽ー仕事終わったから帰るぞ。」

「結構給料もらえたから今日はお鍋だよ。」

「お肉!肉入ってるアルか!」

「安い豚肉だ。あ、沖田くーんコイツと遊んでくれてありがとね。」









ひらひらと手を振りながら帰っていく旦那達。
・・・・どうしてくれるんだ。そんな幸せな家族像だなんて見たら余計苛々する。俺が見たかったのはチャイナが嫉妬して二人を複雑そうに見つめる姿だったのに。なのに計画は崩れ、自分はこの上情けない。



そうだ、全部








「チャイナのせいだ。」

「何が私のせいアルか。」

「・・・帰ったんじゃなかったのかよ。」

「一つ言い忘れたネ。私だって悔しい気持ちになる時もあるヨ。二人を他の誰かに取られたら嫉妬でおかしくなるアル。」








それだけ言って彼女は二人の元に行ってしまった。


結局彼女は同じ穴のなんとやら。
いやむしろ対象が二人だと嫉妬の度合いが増えるのだろう。それでもアイツは必死で食らいつくんだろう。






「アイツには負けねーや。」






アイツが出来て俺に出来ない筈がない。




好きな人が自分のためだけの人形だったらいい。

その考えはまだ継続中。だけど食らいついて、俺だけしか考えられなくなるほどにすればいいという考えも平行して持つことにした。



END

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