夜の貴女に愛の手を3




俺が入店してから1週間がたった。
だけど俺はまだルキアさんが頭を撫でてくれた感覚を忘れそうにない。いや忘れてたまるか。

あの小さなひんやりした手は一気飲みした酔っ払いの俺には心地よかった。
母親が幼くして亡くなった俺とって、頭を撫でられるだなんて遠い昔だから余計にきた。なんかきた。

ルキアさんは男だけどね。
残念ながら。



え、残念ってなんなの俺。










「おう一護、俺のヘルプに回れ...って何トリップしてやがる?」

「恋次、今日ルキアさんは?」

「ほー俺のヘルプがそんな不満かこの野郎。ルキアさんなら休みだよ。NO.2だからって毎日は来ねーよ。」




明らかに肩を落とす俺に恋次はにやにやと憎らしく笑う。“まるで主人を待つ犬のようだ”というからかいの言葉もつけて。
犬って俺よりお前の方が似合うと思うよ駄犬が。




でもまぁ確かにルキアさんはあの初日から休んでいるとこは見たことがなかった。さすがNO.2。店ではひっきりなしに呼ばれるし。
だけどそんな忙しいのに、合間に酒の作り方を教えてくれたり、ヘルプには俺を指名してくれて、自分の客に俺を紹介して早く店に馴染ませようとしてくれている。
ああなんか自惚れていいですか俺。いやいやルキアさんは男だけどね。









「まぁルキアさんに惚れるのはわかるけどな。そこらへんの女より断然可愛いし。」

「ちょ!惚れてねーよ!何て言うか憧れだ、あ・こ・が・れ!」

「ハイハイ。そういうこと
にしてやるよ。だけどマジでいるんだぜ。ルキアさんに惚れた奴ら。てか新人の2人に1人はそうなる。」

「マジかよ。」

「あの顔だしな。しかも....」










「おい!お前ら無駄話は後にしてさっさと姫さんたちの席につけ!」





いい所で海燕さんの怒鳴り声が入り、続きを聞くことは叶わなかった。なんてバッドタイミング。





とりあえず待たせすぎたお姫様のご機嫌をどの言葉で直そうか、まだまだ少ない愛の言葉レパートリーから選ぶのが最優先だろう。


愛の言葉なんてガラじゃないけど、彼のいる世界にもうちょっと浸っていたいんだ。


END

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