後悔と笑顔と涙と



コンコンと綺麗な飾りがついた扉をノックする。返事があったから開けるとそれ以上に綺麗な花嫁が私を迎えた。







「ニア、凄く綺麗!」

「ありがとう!ヨーコさんも凄くかっこいい!」

「かっこいいって何か微妙ねー。」





私が苦笑いをしても“だって本当だもの”と微笑む。相変わらずこの子は変わらない。人に優しさを与えるお姫様。
少し前のアンチスパイラルのメッセンジャーの時の冷たい表情とは大違い。



ずっとこの笑顔でいてほしい



そう思った時、私の言葉を否定するようにニアの身体が透け始めた。








「ニア!」

「....お願い...結婚式までもって....お願い」





おまじないのようにお願いと彼女は呟く。私も彼女の肩を抱き、消えないように祈る。



アンチスパイラルとの戦い。たくさん私達は失った。だからこれ以上失いたくなんかない。
だけど運命は皮肉で、私達がアンチスパイラルを倒したからニアが消える。




こんなことになるんだったら、アンチスパイラルを倒さなければよかったの?いいや、7年前にさっさと諦めて穴の生活に戻ればよかったの?そうしたらカミナだって、みんなだって死ななかったんじゃないの?


過去なんかの修正だなんて神にしかできないのに私はそう下らない想像をする。



そんな情けない私の手を取り、ニアはいつものような可愛らしい笑みではなく、少しだけ厳しい顔で私を見る。






「ヨーコさん、後悔しちゃ駄目。」

「...ニア。」

「今の世界は散っていった人達が道を作ってくれたからある。みんなが綺麗な青空を与えてくれた。後悔なんかしちゃうとその青空まで否定することになる。
だから私が消えることで後悔の感情を思い出さないで。」






“ねっ”といつもの可愛らしい笑みに戻る。そう言う彼女の身体はまた本来の形を取り戻していた。

やはり彼女は強い。












「ヨーコさん、お願いがあります。髪、ヨーコさんとお揃いにしてください。」








彼女の“お願い”を聞いたのは7年前だっけ。彼女はあの頃と違い大人になった。勿論私も。

7年ぶりに触った髪はやっぱりふわふわで気持ちがよい。あの時はそんな綺麗な髪を切るのに罪悪感があったな。7年前と違って今は髪を飾り付ける。





綺麗な髪をあげて一つにまとめあげる。






その時私は見てしまった。また彼女の身体が透け始めているのに。







ニアが後ろを向いていることを理由に私は少し涙をこぼした。





彼女が振り向いて私の大好きな笑顔で似合うか尋ねるまでに涙を止ませよう。そして凄く綺麗だとまた言おう。
後悔がないように笑顔で。


END

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