姉妹




あれ?どうして私から血の匂いがするんだろう。

いや、血の匂いだけじゃない。私は誰かを殺そうとしている?

私はナイフを持って相手を刺している。だけど相手はこらえていて泣かない。
ねぇ、痛いんでしょう?苦しいんでしょう?何で泣かないの?



刺しているのは私の筈なのに“もう泣いていいんだよ”と言いたくなった。



しばらくして気付いたら相手は動かなくなった。ああ死んでしまったんだ。


私が、殺したんだ。

















「キャアアアア!!」





ガバッと起き上がると見慣れない布団の中にいた。


ああそうか、だんだん思考が落ち着いてくる。今日は沙都子と梨花ちゃまの家に泊まったんだった。夜ご飯を一緒に食べて、もう遅いからって“泊めてあげてもいいですわよ!”と沙都子が言って。本当素直じゃないんだから。




何だったんだろう?さっきの夢は。夢心地が悪いなんてもんじゃない。
刺した感触だってリアルだ。思わず身震いをする。








そんな中小さなノック音がして遠慮がちに扉が開かれる。






「詩音さん?どうしたんですの?叫び声が聞こえましたわよ?」

「あ、ああちょっと夢の中でさ缶詰が出てきたの!ほら私が缶詰トラウマだからさ!」






嘘をつくのに罪悪感がわくけどあんな夢を話す方が嫌だ。人を殺す夢なんてこんな小さな子に話すべきじゃない。










「.....缶詰くらいでそこまで震えますの?」

「と、トラウマってそういうもんだって!あっ沙都子、もう深夜ですよ!子供は寝る時間です!」

「そうですわね。では寝させてもらいますわ。」







そう言う沙都子に少し寂しさを感じたけれど、私は沙都子を見守る立場であって、慰めてもらう立場じゃない。年上なんだから、悟史君との約束なんだから。









「では!お邪魔させていただきますわ!」







そう言った瞬間、彼女は私がさっきまで寝ていた布団に潜り込む。あっという間だった。






「ちょっと沙都子!?」

「子供は寝る時間なのでしょう?ほら、詩音さんも眠ってくださいまし。」








ああこの子はこう言ったらもう訊かない。そこに少し可愛らしさを感じる。

“はいはい”と言いながら言われた通り彼女と一緒に布団に入る。

あっ落ち着く。












「.....にーにーも」

「え?」

「にーにーもよく私が怖い夢を見た時添い寝をしてくれましたわ。そうされると凄く落ち着きましたの。」

「そっか。優しいね、悟史君。」

「そんな風に甘えてばっかりでしたからにーにーは....」






そう言って彼女は言葉を濁す。泣きそうな顔して。




何故か夢の中の相手と被った











「たまには泣いていいんだよ?」

「え?」

「そんな顔で我慢している顔より、泣いてすっきりとした顔で迎えてあげた方が悟史君も幸せなんじゃない?あーんなに妹ラブな悟史君でしたから。」








彼女はちょっとだけ呆けて、でもすぐに“そうですわね”といつもの笑顔で言った。









「全く!これじゃどっちが慰めてんのかわからないじゃない!」

「あーら?あんなに震えていらっしゃったのは誰でしたっけ?」

「そ、それは忘れなさい!」






お互いクスクス笑いながら眠りにつこうとする。

気付いたら震えは止まっていた。









「年上だとか、こだわらないでいいんではありませんの?お互い慰め合うのが姉妹....ですわ」

「え?」

「お、お休みなさいませ!」








慌てて布団に深く潜り込む沙都子。



今、“姉妹”って言ってくれた?







....素直じゃない妹を持ったものだわ。




その素直じゃない妹を抱きしめて眠る私も十分素直じゃないけれど。


END

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