絶対的情報
俺のベッドで我が物のように寝転がっている共犯者。ベッドはピザの食べかすで散らかっていて思わずため息をつく。
「ため息なんかついたら幸せが逃げていくぞ?」
「ついてほしくなかったらまずピザはテーブルの上で食べてもらおうか?」
「別についてほしくないとは言ってない。お前がいくらため息をついたって逃げていくのはお前の幸せだ。私の幸せではない。」
「....チーズだけはベッドにつけるなよ。手洗いしなくてはならなくなる。」
「細かい男だ。」
文句を言いながらまたピザにかぶりつく。全く反省の色がない。
何だかんだといってこいつと共犯関係になってから結構過ぎた。
だけど俺が知っているのはこいつの態度のでかさ、食い意地くらいだ。 それ以外何もしらない。
たぶん聞いてもかわされるんだろうけど。
“私がお前の味方だという事実だけで十分だろう”という風に。
確かに共犯者としてはその情報だけで良いのだろう。もしかしたらそれ以外の情報なんて必要ないのかもしれない。
だけど俺はコイツとの契約内容さえ知らない。コイツの願いを。
契約内容を知らないで何が契約だ。
一度、ふざけて『どうせピザを一生食べたいとかだろう』と言ってみたけど、『それもいいが、もっと素晴らしいことさ』と返された。
そしてその顔は悲しげだった。まるでこれ以上踏み込んでくるなというように。
何故か苛立ちを感じた。
*
「やっと呼んでくれたね、私の名前。」
彼女が喋ったのは彼女の名前だった。ようやく手に入れられた彼女の情報の一つ。
だけど俺は彼女のこんな優しげな声なんか知らない。
彼女が誰に呼んでもらったかは知らない。
1つの情報でたくさんの疑問が出てくる。なんともまぁ難儀な少女。
ああ、そうか。これが C.C.なんだ。 それが俺の共犯者。我ながら面倒な奴と共犯関係を持ったものだ。
“私がお前の味方だという事実だけで十分だろう”
その情報だけではやっぱり足りない。
1つの情報でたくさんの疑問が出てくる?そのたくさんの疑問をまた解けばいいんだろう?大丈夫、頭を使うのは得意だから。
「“ーー”」
今知ったばかりの共犯者の名前を呟く。
コイツの共犯者だという少しの優越感と共に。
END