妄想列車




かつてないほど王者立海大テニス部副部長は焦っていた。

彼の制服のシャツの部分に小さな赤い染み。どうみたって女性の口紅だ。



どうしよう。




こんなのを部員に見られてみろ。一気に信頼なんかがた落ちだ。柳や幸村の冷たい視線なんて簡単に想像がつく。ああ恐ろしい。
赤也になんか見られてみろ。教育上良くないことこの上ない。中2という学年はこういうことに敏感なのに。.....父親か、自分は。





とにかくこの口紅はやましいことなんて決してない。自分には女性との交際なんかあり得ないし、この口紅の後は早朝の満員電車のせいだ。....ちょっと待て、ということは女性の唇が自分に触れたのではないか?




......初キッス?



いやいや、キッスというものは唇と唇が触れ合うことだ。マウストゥーマウス!今回は違う、一方的だ!断じてキッスではない。







そういえば自分で思ったこととはいえ女性との交際があり得ないって悲しすぎる。

....いやいや、テニスが我が伴侶だし?今の自分は女性なんて見ている余裕なんてないし?と自分で慰めてみる。そして自分で自分を慰めていることにさらに落ち込む。というよりテニスが伴侶ってまるで一生自分が結婚できないみたいではないか!と数秒後に気づく。

....いやいや、絶対いつか“ダーリンのテニス姿大好きよ”と言ってくれる心優しい女性が現れてくれるだろう!人間何事も明るくに物事を考えなければやっていけない。.....ダーリンって柄だろうか、自分。





....いやいや、そんなことよりもこの口紅だ!そういえば何回いやいやと自分を否定しているのだろう。あっ話それてしまった。



よし、効果はないかもしれないが今から水道で....










「おはよう、真田」

「うおぉぁぁぁ!!」

「朝から大声出さないでくれない?僕、一応病み上がりだからそういう聞くに耐えられない声を聞くと心臓に悪いから。」

「す、すまぬ。てか聞くに耐えられない声って....。」







最悪だ。 よりによって幸村!神の子!こんなことがバレたらいつもの微笑みで....





「不潔、だね」






何故自分が思っていたことが幸村から発せられて自分の耳に届くのだろう。



......



気 付 か れ た





“副部長不純恋愛発覚”という言葉が頭を回る。


さようなら副部長。














「今日の朝ごはん、ミートスパでしょ。赤い染みがついてるよ。」











さすが神の子、朝ごはんを当てられるとは。




制服から匂うケチャップ臭が自分を悲しくさせた。


END

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