早く落ちればいいのに




「丸井先輩」

「んー?」

「俺たち浮いてないッスか?」








甘ったるい匂いが充満する店内。そしてオプションにはしゃいでいるピンク声の女たち。

そんな中、これまたピンクの丸いテーブルに向かい合わせで座っている俺たち。
周りの視線が感じるのは気のせいなんかじゃない。








「あれ?赤也ってケーキ嫌いだっけ?」

「いや普通に好きッスけど...」

「なら食えよ。バイキングって食わねーと損だぞ?損!」




丸井先輩はもう何個目かわからないケーキを一口で食べる。それはもう幸せそうに。うえ...見てるだけで腹いっぱいだっつーの!


今日朝っぱらから電話をかけてきて「緊急事態だから来い!」と言われて慌てて行ったらジャッカル先輩が来れなくなったと言ってケーキ屋に強制連行。ああ電話をとらないでそのまま寝てれば良かったと今になって後悔。









「で、何で俺を誘ったんスか?」

「ワカメとケーキのコラボレーション?」

「コラボしたくないッスよ!てか俺はワカメじゃないッス!」

「いや自分の頭鏡で見てみろィ。てかうちのメンバーを考えろ。ケーキが似合う男がいるか?柳と仁王と柳生は微妙だし幸村を糖尿病にするわけにはいかねーし、真田と行くなんてバツゲームレベルだろ。」





“想像してみろ”と一言。



某副部長が、女たちと一緒にケーキを物色している姿

ケーキを見てほほえんでいる姿

たまらんクリームだなといいながら顔にクリームをつけている姿









「アハハハハそれはないッスよ!」

「だろィ?まだその点てめーはセーフ。」

「あれと比べちゃダメでしょ。」

「わかりやすい例えだろ。」







部活で副部長の顔を見て生クリームが見えてきそうでまた笑った。あー胃がよじれそう。










「それに真っ先に頭に浮かんだのお前だったし。」









一瞬自分の中で笑いが止まる。


なんだその口説き文句は。







「そーいうの女に言ったら一発ッスね。」

「天才的だろィ?落ちた?」

「俺が乙女心をもってたらイチコロッス。」

「つまんね。てかお前に乙女心似合わねーだろ。」




てか男に乙女心はないだろうというツッコミを入れる前に丸井先輩は新たなケーキを取りに行ってしまった。まだ食べんのかよ。



てかさっきは不覚にも本気で落ちかけた。あっぶねー。
高まった気持ちを抑えようと俺はケーキにかぶりついた。

....甘過ぎて逆効果だったかもしれない。



















「男心を口説き方を誰か教えてくんねーかな。」



周りに聞こえないくらい小さな声で赤い髪の少年は呟いた。


END


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