無意識って怖い




「あーしぶといゴキブリ土方、早く死ねよ。」

「あのさ、それ本人の前で言うか?」







今日は朝一番に奴の枕に爆弾を仕掛けといたのに土方さんは無事に生還してきた。あー本当にしぶとい。今回は結構自信あったのに。

ある意味奴を陥れるのは日常になっている。たぶん向こうも陥れられるのが日常だろう。Mだろ、マジで。







「おはよう!トシ、総悟!」




俺たちの険悪な雰囲気に全く気付かないKY、だけど愛すべき上司。

視界を近藤さんでいっぱいにしたいのにちらつく黒い影。邪魔だ、土方死ねよ。





もし人生が思い通りに進んで土方さんが消えたら、黒い影が俺の視界を邪魔することなんてないだろう。近藤さんが一番に呼ぶ名前は俺。

だけど人生なんてうまくいくはずなんかない。黒い影は相変わらず生存中。


明日はどう殺してやろう

今日が始まったばっかりだけど俺はそれに思考を集中させた。













今日は目覚まし時計に仕掛けをして、奴が目覚ましのスイッチを押したとたん刀が落ちてくるようにしてみることに決めた。さすがにこれで終わるだろうと楽しみにトラップを仕掛けに土方さんの部屋に行ったら藻抜けの空だった。あれ?







「ああ、副長なら朝早くに幕府に報告に行きましたよ。」




朝食の時間になっても姿を現さないことを不思議に思い、山崎に聞いた。幕府に行ったということはなんやかんだで帰ってきても遅くだろう。つまり今日は奴がいない。黒い影が邪魔することがない。清々しい。






「おはよう!総悟!」




ほら、近藤さんが呼ぶのは俺だけだ。鬱陶しい名前を口にしない、理想な光景。













「あっ」


見回りをしていた時、よく行く和菓子屋を通った。

近藤さんが好きだと言ってた饅頭が目に入り、迷わず手に取って会計をする。今日の見回りはサボり決定。近藤さんとお茶をしよう。いろんなこと話すんだ。
今日は邪魔がいないんだから。








「総悟、早かったな!」

「これ、お土産です。」

「おっ俺が好きなやつ!ありがとう、総悟!お茶にしようか。」





俺がお茶を入れ、近藤さんが饅頭を並べている時に近藤さんが急に笑い出した。




「総悟、今日はトシはいないぞ。」



そう言って見せられた箱の中には饅頭が3つ入っていた。





そういえばいつもアイツが何だかんだでいるから3つ買っていた。近藤さんの前だったし買わないのも感じが悪いから。


俺が無意識で3つ買ったのか、いつも3つ買う俺にわざわざ店のおばちゃんが1つおまけをしてくれたのか。

原因はわからないけどとりあえず饅頭は3つで。近藤さんはニコニコと“トシがいないと寂しいな”と俺に言った。

最悪だ。







“ただいま”と奴の声が響き渡った。




「おっトシが帰ってきたぞ。良かったな総悟!」





うん、決めた。
今日マジで殺そう。一時的にいなくなるだけでは駄目なんだ。


饅頭がもったいないから饅頭を食べた後、殺してやる。最後の晩餐を楽しんでくださいよ、土方さん。


END

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