ひろいせかい



*3Z設定










教室から窓の外を見る。今日は少し雨空だ。まぁそれくらいが僕にはちょうどいい。雨の音は僕を落ち着かせる。




今度は教室内を見渡す。

騒がしい

この一言をプレゼントしよう。この言葉は僕の一番嫌いな言葉だよ。

本当このクラスの奴らは人間でなく獣だ。獣なんかと交流なんかごめんだ。







騒がしいのが気になるけれど読書に集中しようとするがそれを遮るようにドゴッと音がする。僕の頭から発せられたことに気付くことに時間はかからなかった。











「あっ伊東さん!ごめんなさい!」

「山崎君....君たちは何をしているんだい?」

「サッカーです。」

「ここは教室だが?」

「いいじゃねーの、伊東。外雨だし、体育館は満員だし。てかボール当たったくらいで根にもつな。」

「.....ボールを当てたのは君か。土方君。」

「恨むなら自分の鈍くささを恨めよ。」










そう言ってサッカーを再開しようとする土方。


こめかみにピキッと衝撃が走った気がする。



気付いたら僕は土方の頭に向かってボールを蹴り上げていた。




さっきと同じようにドゴッという音が響いた。


ああいい気味だ。












「....伊東、何のつもりだ?」

「ボールを返してあげただけだけど?恨むなら受け止められなかった自分の鈍くささを恨めばいいと思うよ。」





嫌みっぽく眼鏡をクイッとあげてみる。ああかなり反応してくる。気分がいい。




すぐに豪速球でボールが僕に向かってくる。だけどそんなの予想できる範囲だ。難なく受け止める。



だけどすぐに2射目が来た。


あっ眼鏡が飛んだ。












「ボール2個とは卑劣だな土方君。」

「立派な戦略だ、戦略。」









憎たらしくニヤリと笑ってくる。

教室の片隅に飛んでいった眼鏡を怒りのあまり拾う気になれない。ていうか拾ったらひざまずくような姿勢になる。そんなのごめんだ。









「い、伊東さん!大丈夫ですか!?」





慌てて篠原君が冷やしたタオルを持ってくる。だけど僕が今欲しているのはタオルではない。









「....篠原君。今すぐにありったけのボールを持ってきてくれないかい?」

「は?」

「早く!」

「あっはい!」

「てめ、汚ねーぞ!山崎!こっちもボール持ってこい!」

「人使い荒っ!」









さあ、僕の読書を邪魔してくれた責任をとってもらおう。






















「はーいそこまで。マヨとメガネ...あっメガネは新八とかぶるわ。あー根暗、職員室行きな。」




やる気のない声が教室に響きわたる。このクラスにしてこの担任。
というか根暗と言うのは僕のことだろうか。








「教室でボール遊びって小学生ノリですかコノヤロー。」

「最初に始めていたのは土方君達です。僕はそれに巻き込まれただけです。」

「てめー何僕は関係ありませんって顔してんだ!?さらにボール持ってきたのはどこのどいつだ!」

「さあ?」

「あーもう拉致あかねーわ。二人共黙れ。さっさとごめんなさいしろ。」

『それこそ小学生ノリでしょう(だろ)!』








不覚にもコイツなんかと声を合わせてしまった。気分が悪いことこの上ない。向こうも同じらしく憎らしそうにこっちを睨んでくる。






「まぁいいや。さっさとボール片付けろ。ついでに教室と俺の机も掃除しとけ。」

「いやついでじゃねーだろ。」

「はいはい口出しすんな。マヨ没収すんぞ。」






ぶつぶつ言いながらボールを片付けていく土方。マヨネーズくらいで素直に言うことを聞くとは呆れる。









「あっ根暗ー。」

「根暗じゃありません。何ですか?」

「お前もそんな顔するんだな。」





ニヤニヤと笑いながらそう言う担任。

そんな顔とはどんな顔だ?




「意味わかりませんけど。」

「なんつーか年相応?まぁとにかく机ばっかりかじりついてないで根暗卒業しろ。」






だから根暗じゃないと反論しようとしたが、担任はさっさと行ってしまった。

本当にわけのわからない教師だ。










片付けながら教室を見渡してみる。

相変わらず汚くて獣達にぴったりな空間だと思った。
そして少し広く感じた。



“机ばっかりかじりついてないで”





ああそうか。机が狭すぎたのか。









「おい!何ボーッとしてんだよ。眼鏡踏み潰すぞ。」

「眼鏡踏み潰したら法的手段をとらしてもらうよ。一応値のはる眼鏡だしね。」

「うわ、性格悪。」

「そっちもね。」









うん、少し広い世界も悪くない。


END

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