夜の貴女に愛の手を1




金がない


そんな単純な理由で俺は夜に身を染めようとしている。
だけど大学の合間に稼ごうという程度だ。生活難なわけではない。



とにかく俺は甘ちゃんだったのだ。














「一護、待ってたぜ。」





そう言ってニヤニヤと近づいてきたのは大学が同じの阿散井恋次。コイツが俺をこのバイトを紹介してきた張本人だ。





「だけどまさか一護がマジで了承してくれるとは思ってなかったわ。硬派な黒崎君はどうした?」

「うっせーよ。まぁ時給がそこらへんのバイトと比べモンにならねーからな。」

「その分難しいけどな。なんたってお姫様達を喜ばせなきゃいけないんだからな。
まぁ人手足りてないから歓迎するぜ。

ようこそ、“ホストクラブ・ソウルソサエティ”へ。」






恋次はおちゃらけながら両手を広げ、俺を迎えた。














「一護がスーツを着るとヤクザみたいだな。」

「ほっとけ。お前も似たようなもんだろ。」





さっそく更衣室に案内され、借り物のスーツを着る。まぁ確かにこのオレンジ頭ではヤクザに見えるかもしれない。だけど赤毛に言われたくない。







「なんだぁ?この店ヤクザに乗っ取られんのかぁ?」





爆笑しながら間に入ってきた黒髪の気さくな人。

誰だ?







「おはようございます、海燕さん。一護、この人がNO.1の海燕さん。」

「おう!よろしくな!」





相変わらず爽やかな笑顔で海燕さんは片手を上にあげた。慌てて俺も挨拶をする。ホストって上下関係が厳しいイメージだったから。
ついでに恋次はNO.3らしい。意外だけど。







「まぁ顔はいいし、すぐに指名入るだろ。だけどNO.1は譲らねーけどな。
あっそうだ!NO.2も紹介しとかねーとな。もう少しで来ると思うぜ。」










その時ドアが開いた。


そこには150センチも満たないであろう小柄な身体で、長い前髪から綺麗な紫色の瞳が印象的な人物が立っていた。







「グッドタイミングだなNO.2!」





綺麗な瞳に囚われて、俺の夜の世界の1日目が始まった。


END

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