夜の貴女に愛の手を1
金がない
そんな単純な理由で俺は夜に身を染めようとしている。
だけど大学の合間に稼ごうという程度だ。生活難なわけではない。
とにかく俺は甘ちゃんだったのだ。
*
「一護、待ってたぜ。」
そう言ってニヤニヤと近づいてきたのは大学が同じの阿散井恋次。コイツが俺をこのバイトを紹介してきた張本人だ。
「だけどまさか一護がマジで了承してくれるとは思ってなかったわ。硬派な黒崎君はどうした?」
「うっせーよ。まぁ時給がそこらへんのバイトと比べモンにならねーからな。」
「その分難しいけどな。なんたってお姫様達を喜ばせなきゃいけないんだからな。
まぁ人手足りてないから歓迎するぜ。
ようこそ、“ホストクラブ・ソウルソサエティ”へ。」
恋次はおちゃらけながら両手を広げ、俺を迎えた。
*
「一護がスーツを着るとヤクザみたいだな。」
「ほっとけ。お前も似たようなもんだろ。」
さっそく更衣室に案内され、借り物のスーツを着る。まぁ確かにこのオレンジ頭ではヤクザに見えるかもしれない。だけど赤毛に言われたくない。
「なんだぁ?この店ヤクザに乗っ取られんのかぁ?」
爆笑しながら間に入ってきた黒髪の気さくな人。
誰だ?
「おはようございます、海燕さん。一護、この人がNO.1の海燕さん。」
「おう!よろしくな!」
相変わらず爽やかな笑顔で海燕さんは片手を上にあげた。慌てて俺も挨拶をする。ホストって上下関係が厳しいイメージだったから。
ついでに恋次はNO.3らしい。意外だけど。
「まぁ顔はいいし、すぐに指名入るだろ。だけどNO.1は譲らねーけどな。
あっそうだ!NO.2も紹介しとかねーとな。もう少しで来ると思うぜ。」
その時ドアが開いた。
そこには150センチも満たないであろう小柄な身体で、長い前髪から綺麗な紫色の瞳が印象的な人物が立っていた。
「グッドタイミングだなNO.2!」
綺麗な瞳に囚われて、俺の夜の世界の1日目が始まった。
END