幼なじみの距離5




片思いなんて所詮一方通行。
だから相手のことを考えているようで考えてなかったんだ。















ルキアが俺の答えを待っている。


昔は呼んでいたから?

何となく?


そんな下らない言い訳が頭を回る。


好きだから、とか
ずっと心の中では呼んでいたんだ、とか告白じみた言葉を避けて。










「何年ぶりかに聞いたよ。“一護”。」










彼女のこの言葉は思考をさらに止めるのに充分だった。

俺も何年ぶりかに聞いたんだから。




もちろんその原因を作ったのは俺。








「えっと...その悪い...。」

「何の謝罪だ?名前を呼んだことか?それとも昔のチビ発言のことか?」

「...チビ発言のこと。」

「チビと言ったのは気にしとらんよ。本当のことだし。
ただ“好きじゃない”は気にしたよ。嫌われていたのかな、と。」

「違う!そんな意味じゃねーよ!ていうかそう言ったのも嘘っていうか、逆っていうか、あーもう!何言いたいのか....」






“わからない”と言おうとしたが、それ以上言うことができなかった。


それは一瞬の出来事であって、だけど自分の唇に暖かみを感じたのは確かで、決して妄想ではなくて。





え?


これは俗にいう...










「少しは落ち着いたか?」

「いやいやいや落ち着く所か反対だって!」

「一回黙った方が落ち着くだろう。だから塞いだまでだ。キッスで。」










あっキッスね。


ってやっぱりキス!!!




落ち着く所か頭がパンク寸前だ。



え、ちょ、何でキスしてくれたんだ?俺の想いが伝わった?
いやいやまだ俺はまだ告白してないから!
もしかして告白もできない哀れな俺に同情?余計哀れになるっつーの!


あーやばい考えすぎてクラクラする。










「嫌だったか?」

「い、いや全く!」

「よかった。実は余裕なかったから。」

「え、と、どうしてキッスを....?」










キッスって俺が言うのはキモいだろとか、さっきのわずかな唇の感触を思いだそうとする俺を少し殴りたくなるとか、普段の俺なら突っ込みたくなるんだろうけど残念ながら今の俺にはそんな余裕なんてなく、こう問いかけるのが精一杯だ。










「一護を好いているからだ。昔からずっと。」











平然にしているように見えるけど彼女の顔を少し赤くて、その言葉が事実だとわかる。


頭がパンクしそうだけど俺は自分の気持ちを言わないといけない。




情けなくて女々しい奴だけど、昔からこの気持ちは変わってないから。











「俺も、好きだ。」














“るきあだいすき”


小さい時、何度も言っていたけど今はできなくなった。

今の方が言葉に不器用でどうしようもないけど、それは言葉の重みが違うから。









「少し踊ろうか。順番が逆になってしまったけど。
フォークダンスを好きな人と踊ると両想いになるのだろう?」

「あっ知っていたんだ。」

「だから、お前が他の奴と踊らないよう海燕先輩に音楽係に任命するよう頼んでいたんだ。」





“名案だろう”と彼女はいたずらが成功した子供のように笑った。



同意するかのように彼女の手をとる。

さっきから流れっぱなしな甘ったるいワルツのメロディに合わせながら俺らは狭い放送室で踊った。



下手くそって笑われたけど、そんな言葉も今の俺には幸せだ。


なんたって今日から両想いなんだから。


END

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