好きなものは最後に



誕生日を嬉しいと感じるのはどれくらいまでなんだろう。年数を繰り返すたびにだんだん価値なんかなくなっていくのだと思う。
確か昔、あの貧困な時代でも恋次達が祝ってくれて楽しかったっけ。だけど今は誕生日が来てもそういえば誕生日だっけと思う程度だった。


だけど150回以上誕生日を送った私でも、今年の誕生日は特別だと思うんだ。なんていったって現世に来てから初めての誕生日なんだから。


















「朽木さん誕生日おめでとう!これは私と石田君からです!」



いつもの満面な笑みな井上といつもより若干穏やかな顔の石田の間には大きな袋。開けていいかというと勿論と笑顔で返ってきたのでわくわくしながらリボンをとく。

開けてみると私の身長の半分くらいある大きなうさぎのぬいぐるみ。





「あ、ありがとう井上、石田!このチャッピーとても愛らしい!」

「えへへどういたしまして!」

「うわーこれまた大きなぬいぐるみ作ったね。持ち帰る時朽木さん潰れないようにね。」

「有沢、私はこのくらいでは潰れぬぞ!」

「あははそれもそうか。あ、これ私から。朽木さんおめでと!」




“一護と喧嘩した時使いな”と渡されたのは、ぼくしんぐとやらで使うグローブ。有沢らしいといえば有沢らしい。





「もうたつき!それじゃ色気ないわよ!誕生日よ?誕生日の夜には必要なモノがあるじゃない!相手が黒崎っていうのが気に入らないけど、この千鶴様厳選★セットを....」

「黙れ!この発情猫おおお!」

「たつき、ほどほどにね。あ、これが本当の私達からのプレゼントね。」

「おめでとう朽木さん!」




国枝達から渡されたのは小さなうさぎのワンポイントがついているポーチに入っているコスメセット。


現世の化粧は今一つわからなかったがこれで練習してみようと思った。











「朽木さああああん!!お誕生日おめでとうございますうううう!」

「うるさいですよ、浅野さん。はい、これ僕たちからのプレゼント。気に入ってもらえたら嬉しいな。」

「む、おめでとう朽木。」



浅野、小島、チャドからのプレゼントは真っ白なマフラーと手袋だった。手袋の方にうさぎの尻尾を思わせるような飾りが付いていて凄く可愛らしい。










本当心から嬉しい。大好きな仲間からのおめでとうという言葉は。



だけど私は肝心の奴からまだ祝いの言葉を聞いていなかった。




その肝心なやつは全く関心がないように席に座っている。


少し悲しくなった。





















私は今一護の部屋の前に立っている。結局一護は家族との誕生日パーティーの時も参加はしたが、祝いの言葉は言わなかった。


祝いの言葉をねだるなんて私も図々しいと思う。そんな無理やりな言葉に何の意味があるのかと思う。
だけど私はそれでも彼の言葉が欲しかった。




ノックしようと意気込んだが、その決意は一護がドアを開けたことによって拍子抜けしてしまった。







「ルキアどうした?」

「え、と...いやその」

「とりあえず入れよ。」







そう言って促されとりあえず部屋に足を踏み入れる。




いざ二人きりになると何を話せばいいかわからない。
とにかく何かを話さなければと口を開こうとしたが、一護が行動する方が早かった。

瞬く間に彼の大きな腕に抱きしめられていた。











「誕生日おめでとう」









時計を見ると11時59分。私の誕生日が終わる1分前だった。







「今までごめん。本当は昨日の12時ジャストに言おうと思っていたけど、虚が出て疲れてすぐ寝ちゃっただろ?朝起きたらもう親父達に祝いの言葉言われてたし、その時に俺も言ったら何だか親父達と一緒にされると思って。
だから、最後に言って一番印象が残りたかったっていう俺の我儘。」





ニーッと笑って私をもっと強く抱きしめる。
一瞬だけ呆気にとられたが、嬉しく思った自分と年下に翻弄される自分に気づく。







「不安だったわ、たわけ。」

「ごめん。」

「まぁ許してやる。あ、プレゼントは何だ?」

「てめ、ちゃっかりしてんな。プレゼントはもうあげたよ。」

「お前自身とかはいらんぞ。」

「ち、ちげーよ!手見ろ!手!」







そう言われて手を見ると綺麗な紫色の石が付いた指輪が右手の薬指にはめられていた。







「い、いつはめたんだ?」

「さっき。死神のくせに鈍いなお前。
俺16才だしまだまだガキだから右手な。だけどいつか絶対左手にはめるから。」







そう言って一護は左手の薬指を手にとる。



ああもう、これで全部不安にさせたことはチャラだよ。





最高の誕生日をありがとうと一護に抱きついてそう呟いた


END

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