待てをしすぎた犬
「なあ、ルキア。」
「ヤらぬぞ。」
俺が名前を呼んだだけで即刻断りやがった。まだ何も言ってないんですけど。
「わかりやすいんだよ貴様は。こんな熱視線普段しないくせに。」
「さいでっか。」
まぁ俺が最後まで言葉を発しても結果は同じだ。今回で敗戦13回目。そろそろ現役高校生にとって苦しい数字になってきている。
しかも高校生らしく学校でしか会えないならまだしも俺達は常に一緒だ。ルキアが視界に入らないことの方が稀な気がする。
この状況は馬の目の前に人参ぶら下げて走らせているもんだ。食べれない餌を追いかけるような。あれ、テレビで見たけど本当可哀想。動物虐待だろ。まぁそれは置いといて。
とにかく生殺しだ。しかもルキアは断るくせにくっつくのは好きらしい。いつも俺の膝の間が指定席。THE★拷問。
今だってそこに座って、優雅に雑誌を読んでいる。ちくしょう。
「おい、襲うぞこらぁ。」
「きゃー黒崎君に純潔奪われますわー。」
「とっくの昔に奪っただろうが!」
本当に“とっくの昔”だ。
だけどその後、2回目以降がないだけであって。
....もしかして俺下手だった?
いや確かに余裕なかったし、突進猪だったけど!
「顔青ざめておるぞ?」
「うるせー!ちょっとほっとけ!」
下手くそだなんて男にとって致命的じゃねーか。ちくしょう。いやいや俺はこの間まで初めてだったわけだし、経験なんてないわけだし、下手で当然なわけで。.....はい、言い訳です。こんなことなら硬派ぶらないで、素直にエロ本買って勉強しとけばよかった。水色にでも聞けばよかった。まぁ後悔しても遅いけど。
「一護」
「ああ?」
「貴様はちょこれーとを毎日食べたいと思うか?」
「なんだよ、いきなり。」
「いいから答えろ。」
「好きだけど、毎日食べたいまでは。飽きるし。」
「それと同じだ。」
「は?」
“私は貴様に飽きられたくない”
一瞬呆気にとられたけど直ぐに
コイツはバカだ
と、思った。
膝の間にいるルキアを抱きしめ、呟く。
「本当に好きなもんってさ、飽きねーよ。」
「そういうものか?」
「うん。ならお前もいつか俺飽きるの?」
「わからぬぞ。」
「あっひでー。あっそれならさ試したらいいじゃん。俺が飽きるかどうか。」
「下心丸見えだわ、たわけ。もしかしたら私が飽きるかもしれんぞ。」
「飽きさせねーよ。」
「うるさい、下手くそ。」
「て、てめ!言ってはならねーことを!」
「でもまぁそれも悪くないかもしれんな。」
そう言って彼女は笑った。
とりあえずこれはオッケーのサインかどうか初心者の俺は今晩までに考えようと思う。
END