ホワイトクリスマスには程遠い。(6/6)



 結局その晩では授かることはできなかったのだが、それはたぶん、まだ時期ではなかったのだろう(初めて彼女にねだられたプレゼントが不発に終わってしまったことは非常に残念だけど)。
 こればかりは今後に期待である。



「たかくん、元気すぎ」

「亜子ちゃんかわいいから」

「もう」

「ちょっとじっとして」

「……?」



 控えめに額を隠す栗色の前髪を撫で、かわいらしい額をあらわにさせる。あどけない瞳に見つめられ、つい笑顔になった。



「はい。プレゼント」

「あ、バレッタ」

「前の、古くなっちゃったでしょ」

「うんっ、ありがと」

「いーえ。亜子ちゃんからは、キスだっけ?」



 七年前の思い出。俺たちが、まだはじまったばかりの。青かった頃の。



「よく覚えてるね」

「まあね」

「でも、今日はね、その、」

「『私がプレゼント!』?」

「ち、違います!……男の人って、こういうの着けるかわからないけど、ブレスレットを……」



 ベッドサイドに置かれたチェストから取り出されたのは、いかにもといったラッピングのされたちいさな袋。

 ほのかな明かりの中、サンタクロースとゆきだるまが笑っている。

 その袋からは彼女の言う通りブレスレットが現れた。



「手、貸して」



 左手を取られ、ゆっくりと手首にはめられていくそれ。大きな透明のビーズがいくつか並び、アクセントとしてエメラルドグリーンがぽつぽつと入れられている。



「へ、変だったら、捨てていいから……」

「捨てないって!ありがと」

「……うん」

「――来年もこんな感じでいいからね。無理して人の多いところいったり、高いもの買ったりとかしなくていいよ。亜子ちゃんとこうやってゆっくり過ごして、プレゼント交換して、それでエッチして……って感じで、いいから」

「……えっち」

「ははは!ごめんね」



 餅みたいにぷくっと膨れた亜子ちゃんの頬を両手で挟む。ふにふにとやわらかく、軽くつねってみると彼女がほほ笑む。

 ――マイガール、今日もかわいいね。愛しています。ずっと隣で笑っていてください。

 そんな思いを込めて、額と額を合わせる。どちらともなく、唇を重ねていた。


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