ホワイトクリスマスには程遠い。(5/6)



 風呂を上がってからは早かった。お互い待ちきれないといった雰囲気で、普段とは違う。

 バスタオルだけを身に纏った彼女を抱き上げ、ベッドへと急ぐ。愛猫たちに邪魔をされないよう部屋を閉め切れば、ふたりだけの夜のはじまりだ。

 ベッドに座る彼女が俺に向かって手を伸ばすが、その手は途中で止まり「あっ」と引っ込められた。「メガネ、もう外したっけ」



「はは、そだね」

「えへへ……よろしく、お願いします。」

「うん。こちらこそ」



 今日の始まりの合図は、静かな口づけ。

 彼女と抱き合っていると、夢の中にいるような気分になる。熱い身体に触れ、彼女の吐息を感じ、鼓動を感じ、瞳を見つめ、輪郭をなぞり、ようやく現実なのだと気づかされる。白い肌が赤く色付いていく。ちいさな花をいくつも咲かせていく。いつも「そんなことない」って謙遜するけれど、やっぱりきみの素肌はきれいだ。
 熱を分かち合い、一息ついて髪を撫でていると、ふと俺を見つめる潤んだ栗色の瞳。



「たかくん……あ、あのね、プレゼント……」

「ん?」

「ほしい……」

「珍しい。心配しなくてもちゃんと用意してるよ」

「そうじゃなくてね、あのね、……赤ちゃん、ほしい、です」



 しばらく言葉の意味が理解できずにいた俺は、真っ赤になった顔を慌てて隠す彼女をぽかんと見つめた。

 アカチャン。あかちゃん。――赤ちゃん。



「……!?おあ!?あ、アカチャン……!?ほんと!?」

「だめ……?」

「お、俺も、ほしい、よ!」

「……えへへ」

「――〜っ!亜子っ」

「きゃあっ!ま、待って、もうちょっと、待って……」



 震えた彼女の身体を抱きしめながら、うんと頷く。本当はいますぐにでも熱を注ぎ込んでしまいたい。きみの瞳に負けないくらい、熱い熱い。たくさん、愛を注ぎたい。


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