ハイキュー!! | ナノ




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「ねえ光璃」
「ん?」

帰り道。
今日も部活が終わるまで体育館で清水さんの手伝いをしていた光璃。
先輩たちにからかわれ、僕たちは逃げるように学校を出て並んで歩く。
滅多に自分から話し掛けない僕を、光璃は不思議そうに見上げてきた。

「…もっと、我が儘になりなよ。邪魔なんかじゃないからさ」
「…!?つ、月島く……お昼の話、聞いて…っ?」

口をパクパクさせてる割には上手く言葉を発せていない光璃。
暗くてよく見えないが、多分顔を赤くしているんだろう。
そんな彼女の問いに答える代わりに、僕は笑みを浮かべて耳元で囁く。

「とりあえず、その“月島くん”って呼び方禁止ね。蛍って呼ばなきゃ返事しないから」
「…っ!!//」

今度こそ言葉が出なくなった光璃を家まで送り、別れ際に止めのキスを額に送る。
彼女はというと、普段と違い過ぎる僕の態度に呆然と立ち尽くしたまま動けずにいた。

「…ちゃんと光璃のこと好きだから、遠慮しなくていいよ」

じゃあね、と踵を返し二、三歩進んだところで、「蛍くん!」と呼び止められる。
ゆっくり振り向けば、光璃は制服のスカートを両手で強く握り、薄暗い街灯の明かりでも分かるほど顔を真っ赤にしていた。

「わ、私も!蛍くんのこと好きだよっ」

すごく一生懸命なのが伝わってくる。
きっと彼女の頭の中はショート寸前なのだろう。
僕が軽く頷くと嬉しそうに笑った彼女に見送られ、家路についた。


一、欲張りになること
(ヤバい、絶対に顔赤いんだけど。)

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