ハイキュー!! | ナノ




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「誕生日おめでと、蛍くん」
「…どんだけ買ってきたの」

コト、と置かれた大き目のお皿には、5つのショートケーキ。
それぞれ違うお店で買ってきたものだった。
やれやれ、と呆れ顔で腰に手を当てて立っている彼の姿は、ショートケーキたちの向こうに消える。

「スプーンかフォーク、持ってくる?」
「あっても僕には使えない」

不機嫌そうな顔をしているつもりかもしれないけれど、喜びを隠しきれていない蛍くん。少しソワソワしている彼に微笑みながらも、自分より大きなショートケーキたちをどうやって食べるのか、気になっていた。

「……なに。」
「あ、うん。上手に食べるなあって」

2つ目のショートケーキを食べ終えた蛍くんは、ケーキの上に乗っていた大きめの苺を抱えるようにして食べている。
その体勢のまま、ジトっとした目でこっちを見た。…私がずっと見つめていたのが嫌だったのかもしれない。

「子供じゃないんだから…汚すわけないデショ」

冷ややかな目で見てくる彼の表情はいつもなら威圧的だけど、体長10センチほどの今はひたすら可愛い。
苺抱えて食べる姿とか、萌え死しそう…。

「ちょっと。何ニヤニヤしながらこっち見てるの。…もしかして、僕のこと“可愛い”とか思ってる?」
「え゛」
「…ふーん」
「あ、イヤ、別にそんな…っ」
「…僕だけ小さいから悪いんだよね。光璃も小さくなればいいんだよ」
「え、ちょ、まっ……」


     *     *     *


「…光璃、いいかげん起きなよ。ねえ。わざわざ僕んちに昼寝しに来たわけ?」
「…ん…?ショート、ケーキは…好きじゃない…」
「はあ?寝ぼけてるの?」
「……う、ん……あれ?蛍くん…大きい…」
「…ねえ、頭大丈夫?」

怪訝そうな顔で私を見下ろす蛍くんは、苺を抱えて食べたり、ショートケーキの陰に隠れたりできるサイズじゃない。

「…うーん…」

普通に考えて、当たり前だけど。
それにしても苺を抱える蛍くんは可愛かった。我ながらいい夢だったと思う。

「ねえ、何でホールケーキ焼いたのにショートケーキ5つも買ってきたの?流石に食べきれないんだケド」
「あ、じゃあ日向くんたちも呼ぼうよ。みんなでお祝いした方が楽しいよ」
「…絶対やだ」
「えー」

(光璃の焼いてくれたケーキを日向たちに食べさせたくない…とは口が裂けても言えない)


   *   *   *   *   *

happy birthday K!
2015.9.27

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