あんさつ。 | ナノ

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カ「殺せんせー…渚スタンガンしまっちゃったよ」
殺「……」

カエデちゃんが不安そうな声を出したけれど、その手の中の殺せんせーも少し心配げな視線を、渚くんに向けていた。
隙を見て加勢しようと動いていた千葉くんとひなたちゃんは、鷹岡に釘を刺されて動きを止める。
殺せんせーは、いざとなったら鷹岡先生を撃ってくださいと、烏間先生に小声で指示した。

『…渚くん…』

この前とは、状況が違う。相手は渚くんの能力を知っていて、それを警戒してる。つまり…
   ズンッ

渚「あぐっ…がはッ」
鷹「おら、どうした?殺すんじゃなかったのか」

…つまり、渚くんの暗殺の才能は、ここでは通用しない訳で。

カ「(烏間先生!!もう撃ってください!!渚死んじゃうよ、あんなの!!)」

同感だった。これ以上、渚くんが一方的に痛めつけられるのを見ているのはつらい。
私も同意だと、視線を烏間先生に向ける。

寺「待て…手出しすんじゃねー」

烏間先生が静かに銃を構えたとき、座ったままの寺坂くんが声を上げた。

業「まだ放ってとけって、寺坂?そろそろ俺も参戦したいんだけど」

…参戦する気だったの、カルマくん!?
赦しませんよ私は。何ならこの際気絶させてでも止めますよ。だってカルマくんが痛めつけられるところなんて絶対に見たくないもの。
私はそっと立ち上がると、烏間先生とは別の向きに構えの体勢を作る。
でも、渚くんがまだ隠し玉を持っているらしいとの寺坂くんの言葉を聞いて、もう少し様子を見ることにしたらしいカルマくんに、私も腕を下ろして再び渚くんの方を見つめた。
…静かに深呼吸をした渚くん。そしてゆっくりと…微笑みながら鷹岡に向かって歩き出した。
自然な動作でナイフの間合いまで詰め寄り、そして…腕を上げるのと同時にナイフからも手を離す…。

『え…?』

   パァン…!
大きな音が、緊迫した空気の中に響いて消えた…。
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