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鷹「謝罪しろ。土下座だ」
その言葉に従い土下座した渚くんの頭を踏みつける鷹岡。
渚「本当に…ごめんなさい」
それでも地面に頭を付けて謝る渚くんを見下ろす鷹岡に、言いようのない怒りが込み上げてきた。なんで…渚くんが謝ってるの…何も悪いことしてないのに…っ。
…満足そうに笑った鷹岡は、爆弾のスイッチとスーツケースを手に、ウイルスに感染した人がどうなるのかを話し始めた。
…まさか………
鷹「見たいだろ?渚君」
渚「!」
烏「やッやめろーーーッ!!」
ドウゥゥン
烏間先生の叫び声と爆破音は、ほぼ同時に空に響いた。爆破されたスーツケースから、治療薬の瓶の破片が降ってくる…。
『…嘘…』
そんな…。
ここまで…皆で頑張ってきたのに。
渚くんは、皆のために理不尽な土下座までしたのに。
…私たち何も…悪いことなんてしてないのに…どうしてこんな目に遭わなきゃいけないの…?
足の力が抜け、私が地面に座り込んだその時…。
…カチャッ
『…!』
渚「殺…してやる…」
ナイフを拾い上げた渚くんの目には…殺せんせーに向けるのとは別の種類の、殺意。
鷹「ククク、そうだ。そうでなくちゃ」
鷹岡は満足そうに笑ったけれど…私たちは皆、同じことを考えた。
“渚くんを冷静にさせないと…今のままじゃ、危険だ…!!”
殺せんせーが指示を出し終える前に、寺坂くんは渚くんの頭めがけてスタンガンを投げた。
寺「チョーシこいてんじゃねーぞ渚ァ!!」
寺坂くんに続いて、殺せんせーも渚くんを諭す。…けれど、渚くんの目から殺意は消えない。
ドサッ
寺坂くんは叫んだ時に体力を使った所為か、座り込んでしまった。
吉田くんと村松くんが驚きの声を上げるなか、寺坂くんはこっちを向いた渚くんを見つめる。
寺「…やれ渚。死なねぇ範囲でブッ殺せ」
…渚くんは拾ったスタンガンを腰に納めた。
それでも少し、私はほっとした。
…渚くんの目の、殺意の種類が変わったから…。