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体育の時間に習った“ナンバ”。衣擦れの音や足音なんかも抑えられるから、暗殺するときに使えると。…まさか、初めて使う相手が殺せんせーじゃないなんて…。
複雑な気分になりながら、烏間先生の合図に従って、そっと犯人に近付いて行く。
?「か ゆ い」
…言葉を発した犯人のその声は、聞いたことのあるものだった。
忘れもしない、恐怖の時間…。
烏「…どういうつもりだ、鷹岡ァ!!」
烏間先生の怒声が響く部屋の奥で振り返った、前よりずっと酷い顔の鷹岡、先生…。
ヘリポートまで来て話された計画は、悪魔みたいなものだった。しかも、渚くんへの逆恨みのために。
『最っ低…自分が悪いのに…そんなつまらないことで、皆を…っ』
業「…結花、」
ぎゅっと握りしめた私の手を、カルマくんがそっと解いてくれる。…けど、カルマくんも怒っているようで眉間に皺が寄っていた。
業「その体格差で本気で勝って嬉しいわけ?俺ならもーちょっと楽しませてやれるけど?」
渚くんを庇うように立ってそう言ったカルマくん。私は渚くんが心配で、そっと近くに行った。
『…渚くん』
渚「結花…」
『大丈夫、渚くん一人で戦わせたりしないよ。皆同じだけ、あの人のこと怒ってるんだもん…皆で戦おう?』
渚「…ありがとう」
渚くんに、一人で来いと言った鷹岡。渚くんは抱えていた殺せんせーをカエデちゃんに渡して、背を向けてしまう。
『渚くん…!』
渚「…ありがとう、結花…。…さっき、カルマ君を信じたみたいに、僕のことも信じてくれないかな…?」
皆が、心配そうに渚くんを見つめていた。
思わず叫んでしまった私に、渚くんはいつものように笑ってそう言う。
『…っ…分かった、信じるよ。だから…ちゃんと無事に、戻って来てね』
渚「ありがとう、結花」
…気をつけて、渚くん…。