あんさつ。 | ナノ

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『烏間先生…大丈夫ですか?』
烏「あぁ、歩くだけならな。強力といっても、所詮は麻酔ガスだ。心配は要らない」
『そうですか。良かった』

磯貝くんに支えられている烏間先生。…象をも倒す…って聞いたから心配だったけど、案外平気そうだった。烏間先生は、いつものように私の頭に手を置いて、ほんの少しだけどその怖そうな顔を緩めて笑ってくれる。
…何か、後ろから凄まじい殺気を感じる。敵でもいるのかな…って、振り向いたらカルマくんだった。

『ご、ごめんなさい烏間先生!』

カルマくんの殺気に、勿論気付いている烏間先生は苦笑いしていた。私は頭を下げて、慌ててカルマくんの所へ。…うわぁ…いつもの3倍増しのブラックスマイルだ…。
…5階展望回廊まで進むと、明らかに普通じゃない空気を纏った男の人が立っていた。
最初の一言は自然だったけれど、その後出てくる「ぬ」は、何とも不自然な使い方。やたらと「ぬ」を使いたがっているとしか思えない喋り方だった。
強そうな敵を前に集中しなきゃいけないのに、その喋り方が気になっていまいち真剣になれないのは、私だけじゃないと思う。

業「“ぬ”多くね、おじさん?」

…きっと今、誰もがカルマくんのツッコミに感謝した。
…外国人のおじさんは、素手が武器だと言う。その気になれば、頭蓋骨も握り潰せると。本当は強い敵と戦ってみたがったが、お目当てだった烏間先生が戦えそうもないので、仲間とボスを呼ぶ。と、おじさんが取りだした携帯は、一瞬にして窓に叩きつけられた。


『っ!!カルマくん!!』

おじさんに戦いを挑むカルマくん。
無謀だ、と止めようとした烏間先生を、殺せんせーが制する。

殺「…心配だとは思いますが、今の彼ならきっと大丈夫ですよ、結花さん」
業「…結花、前に言ってくれたよね?“信じてる”って。俺、負けないから。信じてよ、結花」
『…うん…!』

相手を真っ直ぐに見つめるカルマくんは、以前よりも頼もしく、恰好よく見えた。
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