あんさつ。 | ナノ

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…話し終えた私の耳に真っ先に届いたのは、「そっか…話してくれてありがとう、結花」というカルマくんの優しい声
………ではなく。
「あのガキ、絶対に殺してやるわ!!」というお姉さまの怒声、と言う訳でもなく。
「辛かったですね、結花さん!」と、自分の涙で顔がふやける程泣いている、殺せんせーの声だった。
おーいおい…と泣く殺せんせーに、シリアスな空気が一気に和む。…気がするのは私だけかな…。

『泣きすぎですよ、殺せんせー。もう昔のことですし…』
殺「そんなことはありません!皆さんだって同じくらい泣いてますよ!」
『…え…?』

輪郭が歪んでしまっている殺せんせーに苦笑して言うと、カタリ、と廊下の方から物音がすると同時に殺せんせーも廊下の方を示した。驚いて振り返ると…

『え、ちょ、皆!?』

殺せんせーに負けず劣らず(…は言い過ぎかな)泣いている皆の姿があった。

『い、い、いつからそこに…!?』
杉「カルマが本校舎でのことを説明した辺りから…」

ぐすっ…と鼻をすすりながら答えた杉野くん。ってことは最初から聞いていたんじゃないの。

業「…結花、」
『…カルマくん…?』

隣にいたカルマくんに腕を引かれたかと思うと、抱き締められた。

業「…俺は、どんなことがあっても結花の味方だから。今すぐには無理かもしれないけど…いつか、俺を信じられるようになって?」
『カルマくん…ありがとう。でも、大丈夫。もう…信じてるから』

…抱き合っていた私たちを、殺せんせーがニヤニヤ顔で見ていたのを知るのは、もう少し後のこと。
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