あんさつ。 | ナノ

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E組の教室まで行くと、ギャーギャーと騒いでいるお姉さまと殺せんせーがいた。
…歩いていたクラスの人たちは全員抜かしてきたから、生徒は一人もいなかった。

殺「あ、時雨さん!タルト美味しかったですよ!」
ビ「結花、こんなタコに作るくらいなら私に作りなさいよ!」

二人の手には、私が殺せんせーにあげたベリータルトがあったから、きっと二人で取り合ってたんだな…と、ぼんやりした頭で考えた。
少し、ほっとする。
あの場所からも、あの人からも離れた所に私は居るのだと実感できるから。

ビ「…結花…?ちょっと、どうしたのよ!?」
『え…?』

お姉さまが慌てて私に駆け寄ってきた。…殺せんせーも驚いた顔をしている。

ビ「本校舎の奴らに何かされたの?どいつよ、私の結花を虐めたのは!名前を教えなさい、結花!私がぶっ殺してやるわ!!」

…目が血走ってるよ、お姉さま…。
虐められた?私が?誰に?

『…あ、』

何を言われているのか分からなくて、パチパチと瞬きをする。…ぱた、ぱた…と何かが床に落ちる音がして、ようやく私は自分が泣いていることに気付いた。

業「結花から…離れてよ、ビッチ先生…。結花…大丈夫…?」

心配そうなお姉さまを前に呆然と立ち尽くしていた所へ、教室に駆け込んできたカルマくんが私の手を引く。…カルマくんの後ろには、有希子ちゃんもいた。
二人とも、追いかけて来てくれたんだ…。
荒い息のまま、途切れ途切れに言葉を紡いだカルマくんは、私の涙を拭って抱き締めてくれた。

『っ…カルマ、くん…』

カルマくんの腕の中で、声を押し殺して泣いた。
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