あんさつ。 | ナノ

61

終業式。
皆はテスト勝負に勝った要求の確認の為に、生徒会長である浅野くんに会いに行った。
…本当はクラス全員で行く予定だったらしいんだけど…お願いして私は行かなくてもいい事にしてもらった。カルマくんが、「じゃあ俺も行かない」って、付いて来てくれた。
カルマくんはともかく、国語で1位だった私が行きたがらないのを皆が不思議そうにしていたけど、有希子ちゃんが誤魔化すのを手伝ってくれた。

『ありがとう、有希子ちゃん』
神「ううん、事情を知っているのは私だけだったし、結花ちゃんが困ってるのに放っておけないよ」

…あぁ、目の前で天使が微笑んでいる…。
そんな訳で式も終わり、教室に戻ろうとしていた時。

?「結花さん、待って!」
『っ!!』

後ろから、少し焦ったような声で呼び止められた。
…会いたくなかった人。私がE組行きと知らされたとき、E組に落ちるという事より、この人に虫けらを見るような目で見られたことの方が、ショックだった。
両親や親友だと思っていた人たちから罵声を浴びせられるより、この人に信じてもらえなかったことの方が辛かった。

業「…あんたが一体、結花に何の用?って言うか、気安く名前で呼ばないでくんない?誰に許可取って、結花のこと名前で呼んでるわけ?」
神「…結花ちゃん…」

カルマくんは訝しみながらもその人を睨みつけ、有希子ちゃんは心配そうに私を見る。
…逃げたい。走って、あの木造の校舎まで全速力で走って、カルマくんにギュって抱き締めて欲しい。今すぐに、ここから逃げたい。…のに、私は振り向いてしまった…。

『…っ何か、ご用ですか…?』

私に追い付くために仕事を放って走ってきたのだろう、息を少しだけ乱すその人に、震えていることが分からないように出来るだけしっかりした声で、顔面に引き攣った笑みを張り付けて、後ろにいる浅野くんと向き合った。
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