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テストが終わって3日。
…結果が返ってきた。
殺「国語のE組1位は…時雨結花!!そして学年でも浅野君と並んで1位です!!」
…殺せんせーの言葉に盛り上がる教室内。だけど私は、教室の最後列の空席が気になっていた。
本当なら、今ここで、私の隣で、私の頭を撫でて褒めてくれるはずなのに…。
『………カルマくん、』
やっぱり、順位下がっちゃったんだ。
私がもっとちゃんと言っていれば…。
殺「…自分を責める必要は無いですよ、結花さん。今回のこれは、勉強しなかった彼の責任です」
『…はい』
いつの間にか隣に立っていた殺せんせー。…やっぱり、私の考えてることを見抜いてたんだ。
殺「…休み時間、私と一緒に来なさい。見せたいものがあります」
『?分かりました』
何だろう…と思いつつも、授業終了のチャイムが鳴ると同時に殺せんせーの後に付いていく。
『…あ、』
殺「時雨さんはここにいて下さい。この距離なら、業くんに気付かれずに会話を聞けるでしょう」
殺せんせーはカルマくんを見つけると、私を近くの木の陰に立たせ自分はカルマくんに近付いて行った。
殺「恥ずかしいですねぇ〜」
ちょ、ちょっと殺せんせー!?
いいのかな、今のカルマくんにそんな事言っちゃって…(汗)
殺せんせーに散々言われて、カルマくんはその場から逃げるようにして去って行った。
殺「ご心配なく。立ち直りが早い方向に挫折させました」
…殺せんせーは読心術でも使えるんじゃないかと思う。
『…そうですか。…あの、ありがとうございました。私じゃどうしようもなくて…寧ろ、こんな順位を取った私が話しかけても、傷つけるだけのような気がして…困ってたんです。殺せんせーが言ってくれて助かりました』
ありがとうございます、と頭を下げた私に、殺せんせーはニヤニヤとする。
殺「いえいえ、担任としての役割を果たしているだけですから。…それにしても業くんは結花さんに愛されていますねぇ。最初は業くんの一方的なものかと思っていましたが…あなた達はクラスの中で唯一にして最高のカップルのようですね」
『ちょ、殺せんせー!?//』
ニヤニヤ顔で何を言い出すかと思えば…流石は殺せんせー。ゲスい。
…でも。
担任が殺せんせーで、本当に良かったと思う。
カルマくんも、この先生に救われた。前の担任に裏切られ、先生が嫌いだったカルマくんのとげとげした雰囲気が、殺せんせーにお手入れされてすっかりまるくなった。
…私もそう。トラウマや恐怖症も、もう殆ど無くなってる。先生や大人と1対1で話していても、もう怖くない。
『本当に…ありがとうございました、殺せんせー』
殺「…時雨さん…?」
私を取り巻く空気がさっきまでと違うものだと気付いたのか、殺せんせーが微かに不思議そうな顔をする。
『…甘いもの、お好きでしたよね。私、お菓子作りは得意なんです。お礼になるかは分からないけど…明日、タルト焼いてきますね』
殺「ほ、本当ですか!?」
そう言って笑った私に、殺せんせーがしがみ付く勢いで私に詰め寄った。
それを見つけたのであろうカルマくんが、私と距離が近いと、殺せんせーに跳び蹴りを食らわせるまで、あと30秒。