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業「流されたのは皆じゃなくて自分じゃん」
自白じみたことを言った寺坂くんを殴り、見下ろしてそう言ったカルマくんは、岩場を降りて殺せんせーの状況を見に行こうとする。
『あ、待ってカルマくん、私も…』
慌てて後を追うために立ちあがろうとした。…けど、やっぱりまだ上手く力が入らない。
業「結花はそこにいてね。足場悪いし、危ないから」
『え…私も行きたい…』
業「そ こ に い て ね ?」
『…ハイ。』
…カルマくんのブラックスマイルには勝てなかった。
カルマくんは私が頷いたのを確認すると、踵を返して行ってしまう。
『…カルマくんいじわる…ばーかばーか…』
聞こえないのをいい事に、私は頬を膨らませて呟く。
寺「…。…おい、」
『…わぁ!?寺坂くん、まだいたの?』
寺「(怒)…お前、何で動けねぇんだよ」
私の反応に一瞬イラつきを見せた後、怪訝そうな顔をした。
『え、あ、えっと…その…(汗)…どうして、そんなこと…?』
寺「…行きたいんだろ?」
返答に困った私は、焦って話を逸らした。寺坂くんはあまり興味が無いのか、特に怪しむでもなく、顎でカルマくんの行った方を示す。
『うん…でも、』
立てないし。怒られるし。
寺「チッ………ほら、」
『…?』
私の前に、背を向けて屈んだ寺坂くん。
寺「…連れて行ってやるよ。あいつに見つからない所で降ろすけどな」
…えーと、つまり………おんぶ、してくれるの…??
ポカンとしていた私に苛ついたらしく、寺坂くんは「早くしろ!」と睨んできた。
『…何で、こんなこと…?』
寺坂くんの肩に掴まりながら、岩場をゆっくり降りていく彼に訊く。……この制服、変な匂いする…。
寺「……昨日の、詫びだ。…言い過ぎた、から…」
『…!』
寺坂くん…案外いい人だね。
ドラ●もんの、ジャイ●ン的な…。
寺「…ここまで来りゃいいだろ」
水音が聞こえる所まで来ると、寺坂くんは私を木の陰に降ろした。
…殺せんせーとイトナ君が戦っているのが見えた。