あんさつ。 | ナノ

48

業「…ここなら、誰も来ないよ」

カルマくんに手を引かれて来たのは、E組の教室から少し離れた丘。周りにあるのは木と草ばかりで、その中で少し開けたようなこの空間は、何だか秘密基地みたい。…確かに、誰かが来ても見つから無さそう。

『…話しても、嫌いにならない…?』
業「…?当たり前じゃん」
『………』

…私はまだ少し、迷っていた。
本当に、カルマくんに話してもいいのかどうか…。

業「…結花。言いたくないなら、言わなくてもいい。嫌な事を思い出してまで、話さなくていい。…だけど、俺に話すことで少しでも気が楽になるなら…教えて。結花が、E組に来た理由」
『っ…。……うん』

…カルマくんの目を見ていると落ち着く。
真っ直ぐな目。いつも、自分が正しいと思ったことをするカルマくんは、きっとその目と同じように真っ直ぐな心を持っているのだと思う。
いつも、私を優しく見守ってくれる目。
…カルマくんは、“あの事”を知っても私を好きでいてくれるかな…?

『……私、ね…。…襲われた、の……担任に…』
業「!?」

カルマくんの顔色が変わる。
一瞬目を見開いたあと、思い切り眉間に皺を寄せて…。…怒ってるみたいな顔。

『…放課後に…教室に残ってろ、って…言われて…私、一人で…待ってたの。…そしたら……ッ』
業「っ…結花、もうそれ以上言わなくてもっ…」
『……そしたら、急に…後ろから、抱きつかれて……体っ…触られて…っ…それで…とっさに……背負い投げしちゃったの…』
業「……………え?」
『私…先生に怪我させたからって、E組行になっちゃって…。その先生、腰と足の骨を折っちゃったから…』
業「!?………そっか。結花が無事で、良かった」
『…!!…あり、がと…カルマくん…』

…大好きだった、担任の先生。
生徒からも先生からも人気があって…その所為か、私が言ったことを誰も信じてくれなかった。…親さえも。
担任の先生は、「告白を迫られたが、自分の立場を考えて断ると逆上され投げられた」と、自分の都合のいいように話を作り、全ての責任を私になすりつけた。
私は生徒からも先生からも白い目で見られ、そろそろいじめが本格的になりそうだと思った頃に、E組行きが言い渡された。
…今でもあの時のこと、はっきり覚えてる。
厭らしく私の体を撫でる手。
耳元にかかる、生暖かい息。
犯されはしなかったけど、トラウマになるには充分だった。
全ての先生が、嫌いになった。
…E組に、殺せんせーが来るまでは。

(結花、大の大人を背負い投げって…なにか格闘技でも習ってるの?)
(うん。空手5段と柔道4段)
(強っ…!?)
prev|next

[ text toptop ]