あんさつ。 | ナノ

45

烏間先生に、誰か一人生徒を選べと言った鷹岡先生。その生徒と戦って、一度でもナイフを当てられたら、自分はここから出て行くと。
…烏間先生は、迷っているようだった。先生の心の中を覗けるわけじゃないけど…色んなことを頭の中でグルグルと考えているように見えた。
それでも烏間先生が向かった先は…

烏「渚君、やる気はあるか?」

…渚くんの所だった。

神「…烏間先生…どうして渚くんを…?」
『…』

クラスの皆がびっくりしてた。少し離れた所に殺せんせーと立っているお姉さまも、不思議そうな顔をしている。

業「…結花は分かるの?烏間先生が渚くんを選んだ理由」
『………渚くんには……才能が、あると思うの…。…寺坂くん達の企みで、渚くんが殺せんせーごと吹き飛ばされたとき……あの時の、渚くんの動きは…とても自然だった、から…。……誰だって、本気で暗殺をしに行くときは…緊張したり、体が強張ったり…する。でも…』
神「…渚くんには、それが無い…?」

私は、慎重に言葉を選んだ。どう言えばいいのかよく分からなかったし、上手く伝えられる自信も無かった。ただ、何となくの、もやもやとしたイメージというか、雰囲気のようなものだけしか掴めていなかったから。それでも、有希子ちゃんには伝わったらしく、私の言いたかったことを代わりに言ってくれた。

『…多分…』

ナイフを口に咥え、軽いストレッチをする渚くんを見つめる。…渚くんに対する想いは、このクラスの人がそれぞれ違うかもしれない。だけど…今、渚くんに向ける言葉は、きっと皆同じだと思う。
(…頑張れ、渚くん…!!)
一旦ナイフを構えた渚くんは、何かを考えるようにじっとナイフを見つめる。…鷹岡先生は薄ら笑いを浮かべていた。きっと…こういう事をするのは初めてではないんだと思う。
…ゆっくりと歩き始めた渚くん。微笑んで、いつも私に話しかけてくるのと同じ空気を纏って。
歩き進めて、鷹岡先生の腕に体がぶつかると、渚くんは表情を変えた。誰もが油断しそうな穏やかな表情から、暗殺者の顔へ。
さっと素早く動いて相手の背後に回り、目隠しをして体を拘束し、自由を奪う。…一瞬だった。

渚「捕まえた」

渚くんが呟く頃には、この場にいる殺せんせー以外の全員が、その光景に目を見張っていた。
prev|next

[ text toptop ]